1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. IT
  4. IT総合

なぜ? 地方で進み始めた「脱・交通系ICカード」の流れ その切実な事情とは

ITmedia NEWS / 2024年7月31日 13時35分

 補助金の性格による部分も大きいが、おそらく「全国共通の交通系ICカードを広めることを推奨」という指針で、国・県・市から補助金が支出されるのだと思われる。

 結果として、表中の3つのパターンのうち「地域+片利用方式」を採用したわけだが、その理由は「補助金を組み合わせるとむしろイニシャルコストを低減できる」「片利用の方が地域の独自施策を盛り込みやすいという柔軟性」にあるのだろう。

●「交通系ICカード」対応の更新費用が高い理由

 さて、この補助金制度には1つわながある。15年の「くまモンのICカード」導入時は、あくまで「(全国共通の仕組みを受け入れ可能な)交通系ICカードの新規導入」という扱いだったものが、今回は「機器の更新」であり、補助金の対象外となってしまう。つまり初期導入時は補助金の存在によって相殺されていたイニシャルコストの高さが、今回はそのまま降りかかってくることを意味する。

 前述のように5社の経営状況は決して芳しくないこともあり、費用負担は最小限に抑えたいという意向が働いたのが今回の決断の経緯となる。全国共通の10カードの受け入れを中止して不自由を被る利用者には、代わりにクレジットカードなどによるタッチ乗車の仕組みが提供されることになるが、この費用も無料ではないものの、10カード関連の更新費用に比べればずっと安いということなのだろう。

 現在日本全国で進んでいるタッチ乗車の導入の最前線で動いている三井住友カードのstera transit事業を統括する石塚雅敏氏は「日本全国のバス会社など中小の交通事業者を中心に同じような機器(運賃箱)の更新問題を抱えており、今後10年とたたずに更新期限が来ることを考えれば、次々と同じような決定を行う事業者が出てくる可能性が高い」と述べている。

 タッチ乗車の具体的な導入コストは非開示のため、今回のケースでの10カードからのリプレース費用との単純比較は難しいが、筆者が取材したすべてのケースにおいて「大きく費用が下がる」という担当者のコメントは得ており、少なくとも補助金制度がなしの状態でのリプレースと比較しても大幅に下がることは間違いない。より少ない費用負担で、10カードが使えなくなることの代替が可能というスタンスだ。

 今回は地域のバス事業社5社が中心となっていたが、特にバス事業者にとって10カードの維持負担が大きくなる理由が2つある。

 1つはバス会社の場合、中小の事業者であっても地域交通を担う場合には少なくとも数十台、中規模以上のケースで100台以上を抱えていることも珍しくなく、機器の更新費用が台数分のしかかってくる。運賃箱を取り扱うメーカーは日本国内に実質的に片手で数えられる程度しか存在しない。とはいえ寡占で暴利を貪っているわけでもなく、狭い市場でしのぎを削っているのが現状だ。ゆえに運賃箱の導入あるいは改造費用はほぼ固定された費用としてカウントされるため、残りの部分でいかに費用を削るかが重要となる。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください