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世界に羽ばたく日本のアニメ・マンガ 躍進の背景と忍び寄る“危機”とは

ITmedia NEWS / 2024年8月30日 15時56分

 海外事業者によって支えられている配信市場がこの時のように急速にしぼんでしまうことは現時点では考えにくいが、これまでのような急拡大が期待できないなか、次なるメディアの変化への備え以前に、国内の制作の現場には解決すべき課題がいまだ山積している。

 もっとも大きな課題は、慢性的な作り手の不足だ。比較的少人数で描かれるマンガと異なり、アニメはのべ100人以上が関わる複雑な生産工程を経て生み出されている。特に、動く絵のベースとなる「原画」を描けるクリエイターは国内に数千人程度しかおらず、スタジオ間で奪い合いが常態化している。また、そこから1秒間に8~12枚は必要となる「動画」とそこに彩色を施す「仕上げ」工程については8割を海外に依存しているとされる。4月にはこの「動仕」下請けが、本来発注があってはいけないはずの北朝鮮にまで及んでいることがデータの流出によって明らかになった。

・「全く知らない」「勝手に使われた」──日米のアニメ制作会社が相次ぎ声明 北朝鮮のサーバから関連ファイルが見つかった問題で(ITmedia NEWS)

 改善は進んでいるものの、給与・報酬などの労働環境が恵まれているとはいえない状況であることも人材供給のブレーキとなっている。いまの市場の急拡大が主に配信からもたらされているのは繰り返し述べている通りで、それ以外の商品化などの市場の開拓には海外事情や著作権の取り扱いに通じた専門人材(いわゆるプロデューサー的人材)が欠かせないが、こちらも長く不足が指摘されている。コアなファンによる「推し活」頼みでは一般化が進まず、逆に先鋭化・蛸つぼ化するリスクすらある。専門人材の育成に注力する米国や韓国と異なり、大学・大学院などの高等教育機関やそこでの研究が心もとない状況であることも、筆者もまさに現場で痛感しているところだ。

 少ない人数で生産性を上げるには技術革新が必要となる。業界ではCGさらにはAIの活用も含め制作工程のデジタル化への取り組みも続いているが、「これ」という決定打はまだ生まれていないのが実際のところだ。

・中期ビジョンの注力分野にアニメ 制作ソフトも開発中(ITmedia NEWS)

 例えば、日本のアニメの特徴とされてきた「コマ打ち」が果たしてこれからも魅力となりつづけるのかも気になるところだ。コマ打ちとは、1秒間に24枚の絵が必要となるところ、あえてそれを8枚(3コマ打ち)、12枚(2コマ打ち)に間引くことで、独特のテンポやリズム感を動画に与える手法だ。さらにその動きのなかにデフォルメを加えることで、映像から強い感情を呼び起こすことにも成功している。

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