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鑑賞後にめちゃくちゃ考え込んじゃうこと必至! エンドロールで身の毛のよだつ感覚に襲われる映画「関心領域」

ねとらぼ / 2024年6月8日 21時30分

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映画「関心領域」

 困った。映画「関心領域」のことを書こうと思ったのだけど、ちょっと正直、この映画のことをどう書いていいのか分からないのである。というのもこの映画、本当の主役というか、確信の部分が画面に映らない。ただ音だけが聞こえてくるのである。

 映画の主な舞台はルドルフ・ヘスの家だ。ヘスはホロコーストにおいて最大の犠牲者を出したことで知られるアウシュヴィッツ収容所の所長であり、彼は家族や使用人たちと共に収容所のすぐ横の豪邸に住んでいた。映画が淡々と見せるのは、主にヘスとその家族の自宅での暮らしぶりである。

 特別なことは何も起きない。ヘスはナチスの親衛隊の高官であり、暮らしぶりは豊かそのものである。日に日にドイツが不利になっているはずの戦況がまるで関係ないように、ヘスは休日に妻や子どもと川に遊びに行ってボート遊びをしたり、寝る前に妻に対して冗談を言って笑わせたり、誕生日を家族や親衛隊の部下たちに祝ってもらったりする。

 親衛隊の将校というのは当時のドイツでは官僚みたいなものだから、当然ながら転勤もあり、それを巡って妻ともめたりもする。カメラはほぼ常にフィックスなので、「ナチスの高級官僚の普通の日常の中にカメラが置かれている」という雰囲気が濃い。まるでリアリティーショーのようだ。

 だが、それらの出来事の全ては「アウシュヴィッツ収容所のすぐ横」というロケーションで繰り広げられている。当然ながら、収容所とヘスの家は高い塀で仕切られているから、ヘスの家の中を映しているカメラに収容所の内部が映ることはない。しかし、音は塀を飛び越えてくる。何気ない日常会話や、眠りにつく前のベッドの中や、庭で子どもが遊んでいるときも、ずっと収容所からの音が聞こえてくる。

 収容所から聞こえてくる音は多様だ。銃声や怒号。ユダヤ人が送り込まれてくる収容所内の引き込み線を行き来する、何台もの機関車の音。そして夜昼なく稼働し続ける、焼却炉が立てる音。映画の中では、これらの音がずっと鳴り続けている。「ずっと」というのは例え話でもなんでもなく、本当にヘスの家が映っているときはずっと何かしら収容所からの騒音が響いているのだ。とにかく耳障りなため、たまにヘスが馬に乗って遠出をしたり、川でボート遊びをしたりしてくれると、ちょっとホッとする。自宅を離れた自然の中では、収容所からの音は聞こえない。

 同時に、ヘス一家の生活の中に見え隠れする、徹底したユダヤ人への差別と収奪、そしてそれを全力で視界から消し、考えまいとする様子も見て取れる。ヘスの家には、なにやらみすぼらしい身なりのおじさんが、食料などの生活物資と一緒に衣料品が入った袋を持ってくる。袋の中には女性物の衣料品が何点も入っており、中には高級そうな毛皮のコートが入っていたりする。

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