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GPUの「レイトレーシング処理」改良の歴史をひもとく【GeForce RTX 40シリーズ編】

ITmedia PC USER / 2024年7月18日 19時30分

 NVIDIAは、SERについて「レイトレーシングパイプラインに、新しいステージを追加したもの」と説明している。確かにその通りだ。CPUの命令実行モデルの変革と同様に、従来の「逐次実行」のスタイルから、「順不同(Out-of-Order)実行」スタイルにシフトしたともいえる。

 ただし、このSERも既存のレイトレーシング対応ゲームで自動活用できる類いのものではない。ゲーム側が制御APIを通じてSERに対応させなければ、SERの恩恵を受けられないのだ。

 このことは、当然といえば当然でもある。ゲームのグラフィックスエンジン(グラフィックサブシステム)は、「どの3Dモデルのどのポリゴンには、どんな材質設定がなされていて、どのテクスチャを使うのか」といったことは把握している。ゆえに、衝突が検知された各レイが、これからプログラマブルシェーダーへ発注することになる処理内容にも見当が付く。

 どのゲームにも自動対応する(≒アプリとしての特別対応を不要とする)よりも、グラフィックスエンジンで効果的なSERメカニズムを実践する(≒アプリで特別な対応を施してもらう)方が、仕組みを最大限に生かせるのだ。

 ちなみに、NVIDIAは開発者向けにGPUパフォーマンスの解析ツール「NSight Graphics」を用意している。SERの利用に当たっては、このツールを使って解析してから実装することが推奨されている。

 SERについては、先の改善と同様に現時点ではDirectX Raytracingを介して利用することができない。NVIDIAは他のグラフイックス関連企業と連携して、標準対応に向けた協議を進めているという。

 その実際の効果だが、NVIDIA調べで「Cyberpunk 2077」の最上位設定「Overdrive Tracing」においてSERを有効化すると最大44%のパフォーマンス向上効果があるとのことだ。

●レイトレを高速化する機能が“てんこ盛り” しかし“個別対応”がネック

 このように、GeForce RTX 40シリーズのレイトレーシング機能は、我々が想像していた以上にパワーアップしている。

 しかし、ここまでの解説を見てきて「あれ?」と思った人もいるだろう。そう、GeForce RTX 40シリーズならではのレイトレーシング機能を使うには、ゲーム(アプリ)側で個別対応が必要なのだ。

 現状では、NVIDIAから提供されているSDKを活用するか、NVIDIAが提供する「Unreal Engine 5」のスペシャルバージョンを使うことで、これらの機能を活用したゲームを開発できる……のだが、開発者にここまでの“特別対応”をするためのリソースがあるかというと、そこまででもないように思える。

 PCゲーミング向けGPUの世界では、確かにGeForce RTXシリーズはリーダー的な存在だ。しかし、実際に今回紹介した新機能を“効果的に”実装しているゲームは、NVIDIAが開発協力することでアップデートされたCyberpunk 2077以外にほとんど存在しない。

 ただし、GeForce RTX 40シリーズに搭載された新機能は、DirectX Raytracingの新バージョンで標準利用できるようになる可能性が高い。AMDのRadeonシリーズでも対応を果たせば、より多くのゲームタイトルで積極的に使われるようになるだろう。

 次回は、AMDの「Radeon RX 7000シリーズ」におけるレイトレーシング機能の改善ポイントをチェックしていきたい。

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