VRやハイスペックPCは教育をどう変えるのか? マウスコンピューターと大阪教育大学が「VR教材」セミナーを開催
ITmedia PC USER / 2024年7月25日 17時10分
音楽鑑賞にVR映像を活用する――この取り組みは、内兼久氏が前任校である大阪教育大学付属池田中学校に在籍していた頃に実施された。
同中学校では、中学3年の音楽の授業でVR映像による「ブルタバ(モルダウ)」の鑑賞を行った。ブルタバはチェコ出身の作曲家スメタナの代表曲の1つで、鑑賞の目標は「曲想や音楽の雰囲気と、音楽の構造がどのように関わっているのかということを理解すること」だ。
この曲は、チェコを流れるブルタバ川(モルダウ川)の様子が全編を通して描かれる。「この部分はこんな川の様子かな、水量はこれぐらいで、川の太さはこれぐらいというのが、音楽を聞くだけで想像できるような楽曲」(内兼久氏)……なのだが、学習用端末で個別に鑑賞すると音が混ざり合ってしまうので、イヤフォンを装着した上で、鑑賞してもらったという。
生徒に気付いたことを「ワークシート」へと記入してしてもらったところ、ハープに注目した生徒がいたという。通常の2D映像と音の組み合わせだと「『ハープ、演奏してたかな?』と思うような、すごく弱い音色」(内兼久氏)にもかかわらず、だ。
存在感が薄いはずのハープの音色に、なぜ気が付けたのか――それはVR映像でハープの奏者を“見つけられた”からだ。
生徒たちは、視点を変えつつVR映像を見回す。するとハープ奏者がいて、手を動かしていることに“見て”気が付く。すると、奏者が手を動かしている前後の映像を繰り返し再生し、最終的にハープの音を特定できたようだ。
内兼久氏の言う通り、これは「VR映像でないと、なかなか気付くことができない」。
内兼久氏によると、この鑑賞を通して「言葉で表さなくても、音楽を通じて自分の思いを相手に伝えることができる」「音楽はコミュニケーションの(手段の)1つではないか」といった感想を寄せた生徒が複数いたという。また、先のハープの“発見”にもあるように、楽器の音色に対する理解も深められたという。「自分で見つけたということは、人に伝えられるようにもなる」という観点から、VR映像は音楽文化の深化に資するものにもなりそうだ。
自ら進んで楽器の音色を見つけて共同的に学ぶ姿、そして気付きから生まれた新たな疑問を自ら探求する姿勢――VR映像による音楽鑑賞は、一定の効能があったようだ。
小学校の音楽科における活用事例
続いて、大阪教育大学付属池田小学校の石光政徳教諭が小学校課程の音楽科におけるVR教材の実践例を紹介した。
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