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10年間“卒業”できなかったVAIOがノジマ傘下に入る理由

ITmedia PC USER / 2024年11月13日 12時45分

 その「新会社」が、現在のVAIOということになる。

 ソニーは新会社(VAIO)の約5%の株式を保有する一方で、同社の直販チャンネル(現在の「ソニーストア」)においてVAIO製ノートPCを販売するという関係を維持した。しかし、株式の大半はJIP傘下の持株会社やファンドが保有することになり、新会社の経営はJIP主導で行われることになった。

 なお、ソニーのPC事業のJIPへの売却価格は明らかにされていない。しかし、当時の状況や2014年度の通期決算における収束関連費用の状況を見る限り、売却というよりは文字通りの“譲渡”になった可能性が高い。つまり、ソニーが“損切り”のためにJIPに資産や人員ごと譲り渡した――これが当時のPC業界の認識だった。

 ただし、繰り返しになるが実際の譲渡金額は公表されていない。当時の契約書でも出てこない限り、本当のところは分からない。

●いつの間にか“JIP最古参”になっていたVAIO案件

 このような経緯によって、企業としてのVAIOは2014年7月1日に事業を開始した。今年(2024年)で会社設立から10年経過するわけだが、この10年に間に何が起きたかというと、実は何も起きなかった。少し言い方を変えると、大きな赤字などは出していない一方、大きく成長した訳でもなく、安定して運営されてきた。

 若干の紆余曲折はあったものの、本社工場は10年前と同じように運営されており、今でもVAIOの主要なPCの生産を担っている。筆者も10月に行ってきたが、ちょうど新製品の「VAIO SX14-R」の製造が佳境に入った時期で、忙しく製造が行われていた。

 一時期、VAIOは主力製品の製造を外部の工場(具体的には海外のEMS/ODM)で組み立てまで実施し、安曇野工場ではカスタマイズ(CTO)に対応するのみという時期もあった。しかし先述の通り、現在は主力製品は本工場で組み立て工程を行っている他、他の製品についても本工場で全量検品を行っている。ある意味で“日本クオリティー”を担保する拠点として機能しているのだ。

 しかし冷静に考えると、投資会社がカーブアウトされた(切り出された)事業を10年を超えて保有しつづけている(≒売却先を見つけられなかった)という事実は、VAIOの事業成長がJIPの期待ほどではなかったということを意味する。期待通り、あるいは期待以上に成長しているのであれば、高く買ってくれる売却先がすぐに見つかるはずだからだ。

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