[宮家邦彦]【ISIL vs イラク軍、戦闘の行方】~イラク中部ティクリート攻防戦~
Japan In-depth / 2015年3月10日 11時30分
今週のハイライトはイラク中部のティクリート攻防戦だ。3月6日現在、イラク軍・治安部隊は北西、北東、南および南西方面からISが支配する同市を包囲しつつある。ティクリートといえばサッダーム・フセインの故郷であり、外務省の故奥・井ノ上両氏が2004年凶弾に倒れた地域でもある。近い将来ここは壮絶な市街戦の場となるのか。
イラク軍はティクリートを迂回せず、同市を奪還してからモスルに向かう計画のようだが、今のところイラク側の作戦は成功していない。しかし、ISの指揮官が逃亡したとの情報もあるので、何が起こるか判らない。いずれにせよ、ティクリートでの戦闘の行方は北イラク戦線の帰趨を占う上で重要だろう。今後とも要注意だ。
〇中東・アフリカ
冒頭のティクリート攻防戦を実質的に指揮するのがイラン革命防衛隊のAl-Quds(コッズと書かれるが、正確にはアル・クドス(アラビア語でエルサレムのこと)部隊の司令官であることは中東専門家なら誰でも知っている。皮肉なことに、北イラクからのIS掃討作戦はイラン革命防衛隊のイラク北部支配の前兆なのである。
〇欧州・ロシア
9-10日に独首相が訪日、メルケル首相の訪日は7年ぶりとか。13日には東京で日仏「2+2(外務防衛相会合)」が開かれる。日仏の方は今回が第二回目で、地域情勢や安全保障・防衛協力について意見交換するらしい。それにしても、数年前に日仏の外務・防衛大臣4人が安全保障問題を議論するなんて、誰が考えただろうか。
〇アメリカ両大陸
珍しく、特記事項なし。強いて言えば、環太平洋連携協定(TPP)交渉参加12カ国の首席交渉官会合がハワイで開かれることぐらいか。いつも申し上げることだが、多国間貿易交渉は全参加者が最後の最後で譲歩してようやく終結するものだ。重要なカードは最後にしか切らない。だから時間がかかるのだ。
〇東アジア・大洋州
11日にソウルで日中韓高級事務レベル協議が開かれる。今回が10回目となるが、過去5年間は毎年開かれており、日中・日韓関係がギクシャクする中、将来参加国の外相会談に繋げることができるか注目される。
〇インド亜大陸
今週はインド首相がセイシェル(10-11日)、モーリシャス(11-12日)およびスリランカ(13-15日)を訪問する。実はこれら全てがインド洋の島国だ。インドがインド洋の問題を重視していることが良く判る。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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