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[岩田太郎]【アーモンドと人の生活、どっちが大切?】~干ばつのカリフォルニア州で大激論勃発~

Japan In-depth / 2015年4月16日 18時0分

[岩田太郎]【アーモンドと人の生活、どっちが大切?】~干ばつのカリフォルニア州で大激論勃発~

「あんたたちナッツ農家は、カリフォルニア州の水資源の80%を湯水のように使うくせに、州経済の2%分しか貢献していないじゃないか!」

ロサンゼルスのトーク・ラジオ放送局KFIの司会者ジョン・コビルト氏が、ゲストのアーモンド農場経営者のブラッド・グリーソン氏を攻撃する。1200年に一度といわれる大干ばつによる水不足を受け、ブラウン同州知事は都市部住民や企業に対して水の使用を25%カットするよう命令したが、農家へは使用制限が課されず、不公平感が高まっているのだ。

特に、一粒を育てるのに3.8リットルという大量の水を必要とするアーモンドをはじめ、ナッツ類が問題視されている。カリフォルニア州は世界のアーモンドの約8割を生産し、その70%は日本や中国などアジア諸国を中心とする外国へ輸出されている。米CNBCは4月15日、「アジアへナッツ類を輸出するために、都市住民が朝のシャワーの時間を削り、水をやれずに枯れた庭の芝生を引き抜くなかで、憤りが高まっている」と伝えた。

このまま対立が悪化すれば、アーモンドなどの生産量を減らす圧力がかかる可能性がある。そうなれば、ガッキーこと女優の新垣結衣さんが宣伝する「○○アーモンド・チョコレート」も値上げや生産削減に追い込まれかねない。日本人にとって対岸の火事ではない。

先のトークショーでアーモンド農家のグリーソン氏は、「我々の水の使用量は80%ではなく実際は40%で、放牧による畜産業の使用量より低い」と防戦に努めた。しかしホストのコビルト氏は聴取者の前で、「この大ウソつきめ」と罵り、「アーモンドがなくても生きられるが、コップの水がなければ生きていけないんだ」と訴えた。

確かに、ニュースサイト『Gizmodo』のアリッサ・ウォーカー氏が、「アーモンドは悪魔のナッツ」と形容するなど、アーモンドはスケープゴートにされている。だが昨年、アーモンドは同州に110億ドル(約1.3兆円)の収入をもたらすなど、決して悪者ではない。因みに、同州農業全体の生産高は460億ドル(約5.5兆円)なので、アーモンドはかなり重要な作物だ。

『マザージョーンズ』誌のトム・フィルポット記者は4月15日付の記事で、「アーモンドの多くが輸出されて米国にはあまり残らない一方、裕福なアーモンド農家は拡大を続け、水の使用制限に反対することが、反感を買う理由だ」と分析した。

現在、同州世論の批判の矢面に立たされているのは白人のアーモンド農家だが、メディアによる住民感情の報道で「アジアへの輸出のせい」という理由がついていることには、注意を払う必要がある。

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