[遠藤功治]【早期の提携模索も選択肢に】~大手自動車会社の決算と今後の課題 三菱自動車工業 2~
Japan In-depth / 2015年7月14日 23時0分
元々、当社の弱みは日本と米国です。日本は数年前のリコールの記憶を未だに引きずり、かつ、昔のメインの車種(コルト・ミラージュ・ランサ―・ギャラン)が軒並み無くなるか、ライバルにシェアを奪われるか、その市場が縮小するかなどにより、国内での存在感が相当低下しました。現在当社の国内販売の主力は、軽自動車のekワゴン、タイから輸入しているミラージュ、それにD5とアウトランダー、パジェロあたりですが、1~6月の販売台数は、登録車も軽自動車も前年比約27%の大幅減少、双方合わせても5.3万台余り。特に登録車では、メルセデスやBMW、VWの販売台数よりも少ないのが現状です。今期国内販売計画は10.7万台と前期比7%程度の減少を見込んでいますが、現在の状況では、10万台の大台を切る可能性もあると言えます。日産と共同で始めた軽自動車事業も、ekの次が中々出ず、やはりじり貧になっています。
米国も厳しい状況が続きます。数値的には昨年度から1~6月で25%ほど増加していますが、その合計台数は5万台弱、トヨタのカムリやホンダのアコードといった主力車1車種の台数にも足りません。米国での市場シェアは僅かに0.5%で、多くのユーザーにとって代替候補にも上らない状況が続きます。本来であれば、市場全体が好調、特にSUVが旺盛に売れている米国で、三菱自は優位に立てた筈なのですが、ここも過去からの負の遺産、つまり金融で実質的な値引き販売を続け販売店が弱小化、セクハラ疑惑などで不買運動と巨額の賠償金が発生、大量のリコール、そして米国での車種展開のミスなど、その根は非常に深いものがあります。
これら大半の事件から既に10年以上が経過しているのに、いまだ米国でのイメージが回復していないのが現状です。アウトランダーのPHEVが来年初頭から米国にも投入され、その後、パジェロスポーツやパジェロなどが相次いでモデルチェンジ、PHEVの車種が増えることで、米国でのイメージ復活につながるかどうか、今後の三菱自の大きな課題でしょう。
三菱自のR&D費用は今期820億円、売上高比3.6%、他社が軒並み5~6%使っているのと比較すると、大変低い印象です。過去最高益といってもこの2年間のことで、それまでは赤字続きであった訳で、また、新車開発には1車種4~5年が必要な訳ですから、そうそう新しい車がどんどん出てくるとは限りません。加えて、当社は過去20年間、何度となく早期退職を実施、外から見ての推測ではありますが、30代、40代の一番脂が乗った、中心的存在にならなければいけないエンジニアの絶対数が足りないのではないかと思います。
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