[遠藤功治]【カネボウを買収した経営者の英断】~“キラリと光るダイヤモンドの原石企業” 福井県編「セーレン」1~
Japan In-depth / 2015年7月28日 7時0分
その中で川田氏主導により、染色の下請けとの立ち位置から脱皮、自動車シート地の生産という方向に軸足を移して行ったことが、その後の当社の運命を変えたと言える。80年代に入り、日本の自動車産業が急速に発展すると共に、当社の業容も大きく拡大、染色下請けから自動車部品素材の一大メーカーに脱皮した訳である。
第2の脱皮とも言えるのが、2005年のカネボウの繊維部門買収である。カネボウは元々、元請けの超優良企業、それが不正会計問題等で倒産、産業再生機構の下での再起を進めていたのが、その繊維部門のみ、セーレンに事業譲渡された。下請けが元請けをM&Aで取得したようなもので、当時は大きな話題になった。セーレンとしては、原糸から最終製品までの一貫生産体制を構築、赤字垂れ流し企業であったカネボウの繊維部門を買収後2年余りで黒字化することに成功、建て直しただけではなく、現在はKBセーレンという、営業利益では本体以上に稼いでいる高収益な連結子会社に変貌させた。
セーレンはその後、エレクトロニクスやメディカル部門にも進出して行くが、その原糸の開発・生産の中心は、このKBセーレンである。当時はこのM&Aに関して、無謀だ、赤字垂れ流し事業だと批判的意見も大変多かったようだが、今から思えば、あの時カネボウを買っていなかったら、その後のセーレンはどうなっていたのかと、過去を振り返って心配してしまうほどである。後から見れば、評論家のように称賛するのは簡単だが、当時としては、経営者の英断であったと言えよう。
(この記事は
【驚異の微細精密印刷技術、車のシート世界シェア16%】 ~“キラリと光るダイヤモンドの原石企業” 福井県編「セーレン」2~
【グローバル化への脱皮と広報戦略構築が課題】~“キラリと光るダイヤモンドの原石企業” 福井県編「セーレン」3~
に続く。本シリーズ全3回)
トップ画像:出典 セーレンfacebook
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