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[神津伸子]【その先へ!】~「野球は人生そのもの」江藤省三物語 10(最終回)~

Japan In-depth / 2015年8月4日 18時0分

「いやー、あの時は、正直、どうしようかと戸惑いましたが、一緒に面接していた部長が、『塾の精神から、これは断ってはいけないでしょう』と提案して来た」。江藤はそれでも、まだ納得がいかず、「ご両親は、ご存じなのか?」と、川崎に尋ねた。すると、両親は、野球部合宿所の外に待機していたので、すぐ、部屋に飛び込んで来た。

その様子に、さすがの江藤も、一言「4年間頑張れ」と言うしかなかった。入部を許可したものの、トイレや更衣室の件など色々と課題が多く、マネジャーが大変だったと記憶している。その川崎も、時折り、神宮球場での東京6大学野球でバッティング投手として投げては来たが、この秋にラストシーズンを迎える。「悔いが無いよう、頑張って欲しい」と、江藤もエールを送る。

活躍する教え子たちに感動を貰う。そして、新たな出会い、楽しみとは。

教え子たちの活躍は何より、嬉しいと話す江藤。プロで活躍する伊藤隼人(阪神)、福谷浩司(中日)、白村明弘(日本ハム)らだけでなく、社会人野球で活躍する愛弟子たちも沢山いる。先日、東京ドームに、教え子対決を、観戦に出かけた。「出来るだけ多く足を運びたい」と話すが、その1つENEOS対日本製紙石巻。ENEOSには、山崎錬、松本大希が、日本製紙には伊場竜太がいる。試合は2−0で、ENEOSが王者の風格を見せたが、その内の先制点は山崎の犠打、伊場もレフトにクリーンヒットを飛ばした。彼らの活躍に、江藤は思わず目を細めた。

また、ある慶應野球部OBは、伊場の異変に気が付いた。「最高だったのは、8回、2点を追う日本製紙石巻の攻撃に入る時のこと、先頭打者が打席にいる時、ネクストバッターサークルで、何と伊場がバントの構えをして、バントの練習をしていた。もしも、先頭打者が出たらバントもあるからだけど、学生時代の伊場には絶対あり得なかった謙虚な姿。とても面白かったし、社会人になって成長した伊場が嬉しかったな。ヒットも打って良かった」。それほど、教え子たちは、人を更に成長させるフィールドで頑張っているのだと思うと、江藤の胸も熱くなる。



翌日、江藤に伊場から「見に来てくださったと聞きました」と電話があった。「バッティングもリードも良かった」と江藤が褒めたらとても喜んだという。「大学時代にあれくらいやればなあ」に対して、「そうっすね」伊場らしい返事が、返って来た。そして伊場は、自らのフェイスブックに「改めて東北で野球を続けて良かったって思えました」とも、綴った。

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