[岩田太郎]【毛沢東コスプレの習近平が怖れる階級闘争】~中国人民の本当の敵は共産党~
Japan In-depth / 2015年9月9日 18時0分
北京で9月3日に挙行された「抗日勝利70周年軍事パレード」について、『週刊現代』副編集長で中国通の近藤大介氏は、習近平国家主席がいかに自身を毛沢東のイメージに重ねることに腐心していたかを、次のように指摘している。
「…習近平主席だけが人民服姿である。『現代の毛沢東』を気取る習近平主席らしい演出だった。この日の立ち居振る舞いは、本当にかつての毛沢東の所作をマネしていた」
確かに習の「毛沢東コスプレ」は目立っていた。支配者である習が、人民と同じ「持たない」立場であることを装いで匂わせつつ、歴代皇帝の権力の象徴である故宮で式を執り行うことで、絶対権力者であることを強烈にアピールした。
延安市郊外の農村への過酷な下放体験を持つ習だから、日常的に人民服を身につけていた時期もあろう。だが今は、貧困層の人民を含む他の誰も、そんな服装は着用しない。あまりにちぐはぐで、作り物感が強烈であり、習は浮いていた。
筆者は、この壮大かつ調和を欠いた4000億円超のショーを見ながら、毛沢東自身が強調していたメッセージを思い出していた。それは、階級闘争である。
中国共産党の「正統性」は、日米欧資本と結託した中国人の資本家・地主・知識人・富裕層の抑圧から、農民や貧困層を救い出したという作り話に由来する。その物語での主敵は、台湾に逃れた国民党に象徴される中国人の特権階級だ。
この言説は、1965年製作の映画『東方紅』をはじめ、「反動的地主」劉文彩の暴力的な取り立てにあえぐ四川の農民を彫像で表現した『収租院』、「革命バレエ」の『紅色娘子軍』や『白毛女』など、毛沢東時代のプロパガンダに繰り返し現れる。八路軍の敵としての日本軍も登場するが、主敵はあくまで中国人特権階級だ。それが今回のパレードでは、「毛主席の敵」であるはずの中国人が、「習主席の敵」である日本に、きれいにすり替わっていた。なぜだろうか。
それは、現在の中国共産党の本質が、毛が批判した暴虐な中国人特権階級そのものであるからだ。中国人民の真の階級敵は、1989年の天安門事件で人民に銃口を向けた、共産党だ。言論を弾圧し、人民を搾取し、抑圧し、暴利を貪る底なしの暴虐は、国民党ではなく、腐敗した現在の共産党の行いなのである。
毛の共産党がでっち上げた極悪な国民党のイメージは、階級特権を悪用する今の共産党の現実とピタリ重なる。習が最も恐れるのは、自国人民に階級闘争を仕掛けられることだ。共産主義の基本である階級闘争は、共産党に不都合である。
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