時代遅れのロータリーエンジン~称賛記事ばかりの不思議~
Japan In-depth / 2015年11月9日 7時9分
ロータリーエンジンには、称賛記事しかない不思議がある。
ロータリーは非在来の異形エンジンである。現在の熱機関はレシプロか、タービンに二別されるが。ロータリーはそのいずれでもない。爆発力を利用し、直接回転運動を生み出すものだ。
そしてロータリーはすでに駆逐されたエンジンでもある。昭和30年ころにチェーンソー、オートバイ用として登場したが、昭和40年にはいずれも撤退している。それから自動車1社がほそぼそと生産していたが、追従他者はないままに継続的な生産を終えた。
なぜならロータリーが筋悪なエンジンであるためだ。これは昭和40年代前半には、冨塚清さんに指摘されている。
その筋悪なエンジンを再び生産するという話がでている。だが、そこに批判はないことは怪訝である。自動車記事はロータリー復活についての称賛にあふれているが、その不利には眼をつぶっている。
■ 筋悪なロータリー
ロータリーは失敗作と断じられている。既述の冨塚さんは明快にそう断じている。戦前からの航空エンジン技術者で、海軍終戦工作で活躍した高木惣吉さんのブレーントラストも務めた大人物である。
戦後、冨塚さんはことあるごとに異形エンジンの不利を明快に述べた。具体的にはロータリーの不可とフリーピストンの不可がそれだ。これは「内燃機関禁忌集補遺」に詳しい。*
そのうちロータリーの不都合と、レシプロエンジンに対する不利について、大雑把に述べれば次のとおりだ。
■ 円形断面以外にありえない
富塚さんは、まずは燃焼室形状にダメ出しをしている。
ロータリーは長方形断面である。側面から見ればオムスビと繭型でできているが、正面あるいは上面から見れば長方形になっている。
それについて冨塚さんは、「熱膨張や圧力でどう変形するか考えるべきだ」(大意)と指摘している。「円筒状シリンダであれば、加熱して膨張しても断面はどうやっても円だが、長方形は複雑怪奇な変形をする、それを気密出来るか?」(大意)というものだ。
また、気密上での問題点も次のように述べている。「ロータリーの通る空間の断面は長方形、締切り棒は少なくとも4本いる[中略]締切りは[レシプロ・エンジンのピストン・リングのように]何段階に重複させることは不可能」(冨塚)とするものだ。
なにより、四角断面が成り立つなら「従来のレシプロも[詰め込めるために空間効率の良い]長方形シリンダの採用に踏み切ってよいはず」(冨塚)としている。
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