時代遅れのロータリーエンジン~称賛記事ばかりの不思議~
Japan In-depth / 2015年11月9日 7時9分
■ ロータリーは潤滑・冷却・コストで劣る
その上で富塚さんはロータリーの劣位を11点示している。記事中では(a)から(k)までがそれだ。逐一を示すことは煩雑なので簡単にまとめれば、その大概は次のようなものだ。
ロータリーには過熱問題がある。オムスビは1辺が常に点火・膨張過程にあり、ケースの繭型部分はそこだけ常に過熱する。また歯車が咬み合うエキセントリックはオムスビの中にあり、熱源に近接しすぎている。つまり熱がそこに篭もり歯車の膨張や耐熱性といった問題も起こす。
また、潤滑や掃気・吸気も充分とは言いがたい。これはレシプロに対する不利である。レシプロはCの字状のピストンリングで確実な気密とオイル油膜形成が可能である。その上4サイクルであれば、空振りの回で残存ガスを完全に掃気し、その時に2往復目の油膜形成もできる。2サイクルであってもユニフローで掃吸気はまず確保されている。だが、ロータリーはシール形状が複雑であり、常に回転・燃焼しているため潤滑や掃排気の確実は期待できない。
その上で製作精度とコストの問題がある。冨塚さんは「円形シリンダは製作容易であるが、ロータリー外周である繭型も側板も製作は難しい」と述べている。レシプロであれば、一番面倒なシリンダーの製造も戦前技術で可能だ。プラネタリー式研削盤で一工程できるが、ロータリーは何工程かかるかわからない。その製造コストは雲泥となる。
■ 実用性の差は明らか
そして冨塚さんは、実用品の広がりをみれば優劣は明らかと括っている。
レシプロ・エンジンは絶対的に優位にある。「レシプロ・エンジンなら、直径10mm、1.5cc単気筒から、1500リットル4000馬力まで任意の排気量・出力・気筒数で作れる」と端的に述べている。
そして「ロータリーにはそれはできない」と結論づけている。実際にロータリーの完成品を見ても、自動車用の1種類だけであり、単一のローターサイズ・排気量は400~650とほぼ変わっていない。2連あるいは3連以外でのバリエーションはできていない。サイズを小さくすると燃焼が不確実となる。また燃費や燃料品質、排ガスといった今日的課題もクリアできないだろう。
つまり、ロータリーエンジンは50年前から芽がないということだ。
■ 蒸気機関車を買うようなもの
ロータリーはレシプロには敵わない。既に終わった技術であり発展性もない。それを再び市販しようとするのは、新幹線の時代に蒸気機関車を売るようなものだ。
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