[古森義久]【問われる日本の国際テロ対策】~英・有力野党議員がシリア空爆支持~
Japan In-depth / 2015年12月28日 6時0分
2015年の世界の出来事を回顧すると、まず頭に浮かぶのは国際テロリズムである。
11月のパリでのイスラム過激派テロ組織「IS(イスラム国)」による大量無差別殺戮がその代表例だろう。このテロにはどう対処するのが最善なのか。新しい年2016年の全世界的な課題といえよう。
この点でわが日本の対応が一般に甘いことはすでにこのコラムでも指摘してきた。12月中旬のNHKテレビでも「テロとどう向き合うか」という題の討論番組を放映していた。だがこの「テロと向き合う」というのは適切な態度なのか。そもそも「向き合う」というのは共通点を持ち、対等な相手と交流をする際の表現だろう。「友人と向き合う」「子供と向き合う」「高齢者問題と向き合う」などなど、である。どの場合でも基本的に友好や善意をこめての対応が「向き合う」という言葉の真意だろう。
目の前で多数の人を殺した犯人に市民の擁護者の警察が対峙した際に「殺人犯に向き合う」というだろうか。その警察の対応は対峙であり、対決であり、法の執行である。「向き合う」という概念はありえない。
国際的な現状をみれば、日本の上記のような態度がますます少数派にみえてくる。傍観者に近いような気楽な言動とさえ映るのである。そんなことを改めて実感されたのはイギリス議会での有力リベラル派議員の発言だった。この発言はアメリカにも詳しく報道されて、大きな反響を招いた。
舞台はイギリス議会の下院、この12月上旬だった。政府を代表する保守党のデービッド・キャメロン首相がIS対策としてこれまでイギリス軍が実施していたイラク領内のIS支配地区への空爆を拡大して、シリア領内でも実施するという提案を示した。野党の労働党は党首のジェレミー・コービン議員らがこぞって反対した。ところがその労働党の有力メンバーで「影の内閣」の外相であるヒラリー・ベン議員が賛成の激烈な演説をして与野党両方を驚かせたのだった。
「イスラム過激派のテロリストたちが私たちの国家安全保障を脅かし、大量に人命を奪う攻撃を繰り返し、これからもまた攻撃することを宣言しているときに、自国の安全保障、そして自衛の責任を他者にゆだね、傍観することができるのですか」
「私たちはいまファシストと対決しているのです。彼らは計算しつくした残虐性だけでなく、自分たちがいまここに集まったイギリス議会の選良、そして私たちが代表するイギリス国民のだれよりも優越しているという信念を抱いています」
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