夢を売るビジネスに挑戦する男(上)~プロ野球選手のセカンドキャリア その3~
Japan In-depth / 2016年1月10日 14時22分
−夢を売るビジネス
セカンドキャリアで成功している人間は、ファーストキャリアに固執していない人間に多く見られる傾向があるようだ。気持ちの切り替えが、実にうまい。ここで紹介する一人の青年も、まさにその好例と言える。
−ホームランと同じ快感
「お客様を幸せに出来ること。それが自分の幸せ」
それは、今の仕事も、野球をしている時でも、変わらない。
現在、不動産業の日本リアライズ(株)で、営業マンとして、日々マンションを売っている元巨人軍育成選手の和田凌太(22)。笑顔が、実に爽やかだ。そして、何より自信に満ちている。
昨年10月、それまで勤めていた焼き肉店を辞して、同社に入社。直後の彼のフィールドは、茨城だった。そこで、いきなり2ケ月で3軒の契約を決めた。
全て訪問販売、飛び込み営業だ。毎日、これは、という賃貸マンションを探して一日中歩き回る。二万歩を越える日も珍しくない。そして、ここぞという部屋のチャイムを鳴らす。とはいえ、ドアを開けてくれるどころか、応答してくれることさえ、珍しい。まして、マンションの営業と分かれば「いらない、いらない」と、邪険に押し返される。
しかし、そこは焼き肉店店長として、身につけた接客術と、野球で培った持久力で粘り、少しでも興味を持ってもらえそうな人間に誠意を持って話をする。過去の経験は、最大限に活きている。
訪問販売を始めて3日目、ある男性客に手応えを感じ、さらに上司と一緒にアポイントを取り付け、入社12日目には初めての契約を成立させた。マンション購入を決めた男性客の、帰社して報告した時の会社の仲間たち、さらには報告した本社の大橋孝行社長の、全ての皆の顔が忘れられない。契約成立時には、鳥肌が立った。
そして、「ホームランを打った時と、同じ快感があった」
−器用な選手
“野球”は、他のプロ野球選手たちと大きく異なり、和田にとって人生をかけるものではなく、“仕事”だった。彼のおいたちはこうだ。
広島県出身。スポーツ一家に育ち、幼い頃からスポーツ万能だった和田は、バレーボール、陸上のハードル、野球と全てをトップレベルでこなしてきた。中学ではバレーボール部に所属、エースアタッカーでありながら、野球もシニアリーグで活躍。中1年から走攻守揃った選手として、レギュラーポジションを獲得、ショートや外野を守った。打てば左右どちらでもいけるスイッチヒッターでもあった。
高校に入ると、陸上でハードルで全国で7位の結果を残すも、野球のシニアチームの監督の母校である県立広島工業に進学していたので、いつしか野球一本に絞り込んでいった。広島工業は甲子園に出場経験もある、野球の名門でもあった。
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