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「勝つのが仕事」先駆者が語る(下)プロ野球選手のセカンドキャリア その5

Japan In-depth / 2016年2月18日 18時0分

阿野を何度か取材に訪れたが、いつも身なりが素晴らしい。何よりも背筋を伸ばした姿勢がピシッとしていて、口にはしなかったが、いつも感心させられた。そして、きちんと目を見て、話をしてくれた。眼光が鋭いだけに、どきっとさせられることもしばしだったが、とても重要なことだと、再認識させられた。

−基本はチーム

阿野が身を置いていたV9時代の巨人は、長嶋茂雄、王貞治、堀内恒夫、高橋一三、森祇晶、土井正三、黒江透修、柴田勲、高田繁、末次利光らスター軍団だった。が、監督の川上哲治は「一人のスーパースターに頼るチーム作りはしなかった。一人に頼れば、その人間が怪我をしたり不調になったら共倒れになるからだ。常に“チームワーク”の精神を重んじていた。なので、常に各自が“チームのために”何が出来るか考え、実践していた。しかも、連覇、3連覇と重ねても、誰も慢心することはなかった」(阿野)。

こんなこともあった。

少し後の時代になるが、犠牲バントで名を馳せた川相昌弘は得意のバントを、犠牲バントと言わず“チームバント”と、呼んでいたという。地道なコツコツとした毎日の積み重ねがチームを勝利に導く。

ビジネスも、チームワークだ。

−尽きない夢

とはいえ、阿野はこう指摘する。

野球人生を終えて、セカンドキャリアに転じなければならない時、

「多くの人間がまず最初に『やりがいの喪失』という壁にぶち当たる。新しい仕事に、いかにやりがいを見出すかはセカンドキャリアでの成功のカギになると思う」

アドバイスを求められたら「新しいフィールドでは、過去のキャリアをいったんは払拭してリセットすること」と、自らの体験をもとに話す。いい意味でサポートすることは惜しまない。自らの会社でも、“人が人を育てる人間企業”が経営理念だ。人材教育が、企業の大切な守備力の基本だと話す。

そんな考え方の根本は、師・川上哲治に教わった。

「選手は、引退後の人生の方が長い。引退後も社会人として生きて欲しい」と願った川上から教わった“キャッチボールの精神”(「勝つのが仕事」先駆者が語る(上)参照)。

阿野の原点だ。

プロ野球、ビジネスマンとして歩いて来た阿野には、もう一つの夢がある。

「指導者として、子供たちや若者たちに、もう一度野球を教えたい」

常に前向きに人生を邁進して来て、セカンドキャリアでも大成功をおさめた男の夢は、果てることはない。

熱い男の生き様、受け継がれていく。

フィールドは選ばない。

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