商社マンからスポーツ心理博士へ セカンドキャリア番外編
Japan In-depth / 2016年5月2日 23時0分
神津伸子(ジャーナリスト・元産経新聞記者)
セカンドキャリアへ踏み出すことは、何も現職の継続が厳しくなった時と限ったことではない。
働き盛り。
しかも「その時の仕事もメチャクチャ面白くて気に入っていた」が、
「自分にしか出来ない仕事がしたかったから、踏み出した」
そんな、破天荒な男がいる。
世界を股にかける商社マンから、心機一転。スポーツ心理博士という新たなフィールドに踏み出した。
布施努、53歳。
スポーツマンから企業戦士まで、多くの人間の“心”、“チーム力”を鍛える新たなビジネスに取り組んでいる。
スポーツ心理博士とは
「この仕事は、単なるメンタルトレーナーではないのです」 布施は言う。
根本的なチーム作りから関わる仕事だ。
チームビルディング、組織パフォーマンス向上、リーダースキルアップなど、幅広い。
大学卒業後、14年間住友商事で働いた後、渡米し、スポーツ心理学の世界的権威であるGould博士に師事し、最先端のスポーツ科学を基礎にチーム・組織作りなどを大学院で学んだ。Gould博士はアメリカ五輪組織、NFLなどで指導している。
布施も、実際プロ・大学からジュニアまでのチーム作り、コンサルティングに携わり帰国。日本でも、慶應義塾大学(以下慶大)体育会硬式野球部、ヨット部やテニス部、筑波大学、Jリーグなどのスポーツチームや、トーマツ、伊藤忠商事等の企業で指導を行っている。
特に、この冬の全国高校ラグビー選手権で、桐蔭学園を準優勝に導き注目された。同校は、前シーズンで10年連続全国大会出場の記録を絶たれ、新チーム作りから、布施を招聘。布施は、新キャプテン作りから取り掛かった。
シャイで、人前で話すことが苦手だった新主将に、
「自分をわからせる→自分をコントロールさせる→チームのキャプテンを演じさせる」
ために、何度も話し合った。その上で、各選手に責任を持たせ、一人ひとり自立させ、自己判断・発信が出来る人間作りを、キャプテンを中心に行った。監督や布施など指導者が入らないミーティングを繰り返させた。各々が精神的に充実し、役割がわかると、プレイでのミスも減り、作戦も自主的に話し合われ、試合中の当事者意識や自己判断力も向上した。
その充実したミーティングぶりは見たものを驚かせている。
布施がチーム作り段階で同校を訪れたのは、月に1度ずつだった。
「僕のようなスポーツ心理学者の仕事は、あくまでその“場をプロデュース”するサポートをすること。そしてチームの監督が、主役でありプロデューサーなのです。勝利はチーム全員でつかみとるもの」と、話す。
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