LGBTへのいじめの実態明らかに
Japan In-depth / 2016年5月8日 9時54分
安倍宏行(Japan In-depth 編集長・ジャーナリスト)
「編集長の眼」
LGBTという言葉をよく聞く。レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー(それぞれの頭文字を取ってLGBT)のことだ。おりしも、5月7日と8日は、東京・代々木公園でLGBTをはじめとするセクシュアル・マイノリティ(性的少数者)が、差別や偏見にさらされることなく、自分らしく、前向きに生きていくことができる社会の実現を目指すイベント、『東京レインボープライド』が行われている。しかし、LGBTの子供たちに対するいじめの実態は、私達が想像する以上に酷い。
5月6日、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは、日本の学校でのLGBTの子供に対するいじめの調査報告書を公表した。報告書『出る杭は打たれる:日本の学校におけるLGBT生徒へのいじめと排除』は、LGBTの子どもをいじめから保護できていないと指摘した。報告書の中で、2015年10月から12月にかけてネットなどを通じて行ったアンケート結果も公表。調査は14都道府県で実施、性的少数者の子供や、学校教員、政府関係者、弁護士、子供の親、専門家らにインタビューも行った。
調査した25歳未満のLGBT当事者458人のうち、86%が教師や児童・生徒がLGBTに対する暴言や否定的な言葉、もしくは冗談(「ホモネタ」など)を言うのを聞いたことがあると回答した。「生徒が言っていた」が77%。「教師が言うのを聞いた」も29%に上った。
教師がこれらの暴言を目撃したり聞いたりしても、60%が「特に反応せず」で、18%は「教師も生徒に加わり暴言を吐いた」という。また、自らに対し暴言を吐かれた31%(145人)の内、「誰かに相談した」子供は31%(36人)に過ぎなかった。
報告は「いじめ対策や教員研修が不十分。嫌悪に満ちた言葉が子供を自己嫌悪や自傷に追い込んでいる」と指摘し、教員研修の義務化などを政府に求めている。
今回の調査を行ったヒューマン・ライツ・ウォッチLGBT権利プログラム調査員であるカイル・ナイト氏は、「15年前アメリカで(我々は)世界で初めて人権の観点から(LGBT問題を)調査したが、こうした問題は世界中に存在する。LGBTの子供はいじめに遭いやすい。情報の欠如、研修の欠如などが脆弱さを生む。安全な環境で教育を受ける権利を阻むのが構造的なものである。性の問題ではなくてアイデンティティーの問題だ。」と述べた。
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