電力小売り自由化の真実 その4
Japan In-depth / 2016年5月27日 11時0分
竹内純子(NPO法人国際環境経済研究所理事・主席研究員)
「竹内純子の環境・エネルギー政策原論」
最近になって「電力自由化」という言葉を初めて聞いたという方も多いかもしれませんね。
しばしば「我が国ではなぜ電力自由化がされなかったのか」というご質問を頂くこともあるのですが、実は発電事業の自由化は1995年から、小売り事業の自由化は2000年から、それぞれ既に始まっていました。なぜ今まで家庭では電気を選ぶことができなかったのか、実際に事業者を切り替えるためにはどうすればよいのかにお答えします。
Q これまでなぜ家庭用の電力は自由化が進まなかったの?
自由化の経緯をご存じの方から頂く質問です。
我が国では2000年から電力小売り事業の自由化が行われてきました。大規模なユーザーから、徐々に自由化対象を拡大してきたのですが、家庭・小規模店舗にまで拡大するか否かについては、議論が分かれていたのです。
そもそも、こうした小規模ユーザーは、電力事業者からすれば「儲かりづらい顧客」です。電圧を落として、1軒1軒小口配送しないといけないので、手間がかかる割に電気の使用量は少なく、収益は少ないのです。
そのため、海外の自由化した諸国でもこうした小さい顧客を対象とした事業者の参入は限られていました。すでに自由化した分野での新規参入も3%程度しかありませんでしたし、参入のある地域は大都市に限られていました。既に自由化した分野での競争が活発化するように誘導するのが先で、自由化範囲を急いで拡大してもメリットは少ないだろうという判断がなされてきたのです。
さらに詳しくいうと、特に日本は「3段階料金制度」という特殊な料金制度を採ってきました。普通の商品であればたくさん買ったほうがお得なので、賢い主夫・主婦はまとめ買いしてうまく節約するわけですが、電気料金はその逆で一か月の電気の使用量が少ない方が安い単価を適用されるのです。
この“逆転現象”は、弱者世帯保護と省エネ促進という二つの政策目的のために導入されました。普通に考えると、事業者にとっては1か所でたくさん電気を使ってくれる方が良い顧客に決まっていますが、生活必需品である電気の必要最小限の使用量(1か月の使用量が0~120kWh)については第一段階料金という安い単価を、120~300kWhの使用量については第二段階料金として中庸な料金単価を、300kWh以上は高い単価を適用するという制度であり、これにより省エネも促進されるとされていました。
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