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HPVワクチンの効果、子宮頸がん以外にも

Japan In-depth / 2016年5月29日 12時0分

 

【生殖器に発生する癌】

実は、HPVが癌を起こすのは子宮頸がんと咽頭がんだけではない。子宮頸がんは99%、咽頭がんは25-60%がHPVによるものだが、これ以外にも膣がんの70%、肛門がんの80%、陰茎がんの50%、女性陰部がんの40%がHPVによると考えられている。

HPVワクチンが普及すれば、このような癌が予防できる可能性が高い。

 

【食道がん、肺がん】

HPVによる発がんが、このような稀な癌だけならいい。近年、食道がんや肺がんへの関与を指摘する研究者もいる。

例えば、肺がんの場合、2001年に台湾の研究者が、141例の肺がんの病理検体を調査し、55%にHPVの感染を認めたと報告したのが始まりだ。肺がん以外のコントロール60検体からは27%しか検出されなかった。この差は統計的に有意である。

その後、研究が進み、2009年にはドイツのイエナ大学の研究者たちが、HPVと肺がんに関する過去の研究をまとめたメタ解析を発表し、「HPVは喫煙についで、二番目に多い肺がんの原因である」と結論した。

この見解については、医学界の中でも異論があり、いまだコンセンサスとは言えない。ただ、HPVが、子宮頸がん以外のがんの原因として、大きく注目されているのは間違いない。

咽頭がんや子宮頸がんと違い、肺がんや食道がんは患者数が多い。もし、ワクチンで予防できるなら、患者の健康だけでなく、医療経済の面でも大きなメリットになる。現在、世界中で研究が進んでいる。

 

【世界の趨勢】

HPVは、世界中の研究者の関心を集めている。2013年11月には『ネーチャー』誌が「性、がん、ウイルス」という特集を掲載し、HPV対策の重要性を訴えた。

この特集は、HPVワクチンの接種を推奨するのは議論の余地がないという立場に立ち、むしろ男性にも生じる頭頸部がんにウェイトを置いている。HPVワクチンが普及すると、2025年には頭頸部がんの発症が、子宮頸がんを超え、その9割がHPV関連であると予想している。

現在、米国疾病予防管理センター(CDC)は11-12才の全ての男女にHPVワクチンを接種することを推奨している。オーストラリアも、男児を接種対象に加えている。これは子宮頸がんだけでなく、前述したような他のがんも念頭においてのことだ。

女児への接種を推奨している他の先進国も、やがて米国やオーストラリアに習うだろう。今頃、HPVワクチンの安全性を議論している国はない。

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