防衛省行政事業レビューは信用できない その2
Japan In-depth / 2016年7月5日 0時0分
担当者に専門知識が欠如しており、恐らくはウィキペディアあたりを参照して書いたのではないだろうか。かつて陸幕装備部は筆者の著書「防衛破綻」(中央公論新書)に関する正誤表を内部資料として作成した。筆者はその一部を入手したが、あまりに粗雑で、ウィキペディアを参照としたと思われた箇所が何箇所もあった。言うまでもないがウィキペディアの記述は信頼性に欠け、大学の論文でも文献として採用されない。これを利用して資料を作成するということは防衛省の資料の信頼性は高校生以下の作文と同じレベルであるということだ。
「正誤表」の「正」とされたものの多くは誤りであった。筆者はこの件を知り、抗議をしたら、54箇所あった「正誤」箇所は3箇所に減った。しかもそのうち2箇所は国交省との見解の相違に過ぎなかった。
筆者は後日この件を記者会見で小野寺防衛大臣(当時)に質し、全文の開示を要求したが内部資料であることから外部に公開しないと断られた。恐らくこの件で担当者はなんの処罰も受けなかったのだろう。
故に未だに防衛省ではウィキペディアなどの信用性の低い、不正確な資料を利用して資料を作成することが当然のように行われているのだろう。そのような胡乱な資料を元に国防政策が決定されているということになる。これを肯定していいものだろうか。
資料の検証に戻ろう。まず「救急品袋」が同等とあるが、これも事実ではない。陸自のそれは構造が簡単なよくあるポーチだ。これは胴体前部や太ももに装着するが、地雷に触雷したり、IEDの爆発に遭った場合、救急品を収めたポーチが脚と一緒に吹っ飛び失われる可能性がある。またファスナーが破損して開かない可能性も考えられる。
対して米軍のIFAKIIのポーチはボディアーマーの背面に取り付ける。背中に装着するのは、ボディアーマーの陰になるため破損の可能性が一番低いからだ。中に更なるポーチがあり、これを左右どちらからでも引き出せるようになっている。ファスナーは採用されていない。このポーチは落着防止のためにコードで外側のポーチとつながっている。ドイツ軍ではボディアーマーの腹部の身体側に救急品を収めているし、英軍では、専用の救急品ポーチを支給せず、戦闘服の胸の内ポケットに収納する救急品を指示している。いずれもボディアーマーの防護力を活かして救急品を保護し、IEDで救急品を失った教訓が活かされている。
止血帯も「機能は同等、数量不足」とある。確かにIFAKIIでは止血帯が2個、対して陸自のそれは1個だ。だが大きな違いがある。IFAKIIの止血帯は、それぞれの止血帯用ポーチによりIFAKIIポーチ本体から分離させて、いかなる姿勢でも必ず手が届くところに分散して装着する。
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