日本から米軍が引き揚げる日
Japan In-depth / 2016年7月15日 8時51分
古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)
「古森義久の内外透視」
アメリカ大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ氏が日米同盟に批判的な主張をぶつけたことが日米両国に衝撃波を広げた。日米同盟の片務性や日本の防衛負担の不足を非難し、在日米軍の撤退や日本の核武装にまで言及したトランプ氏の激しい言葉は戦後70年も機能してきた日米同盟の根底を揺さぶり、年来のタブーの領域へと踏み込んだからだ。
トランプ発言は表面的には晴天の霹靂と呼べる唐突な現象のようにみえる。バラク・オバマ大統領と安倍晋三首相との下での両政権間のいまの日米同盟は近年でも稀なほど堅固に映るからだ。だが過去をさかのぼり、水面下を探ると、トランプ発言はアメリカ国政の場の内外で一貫して流れてきた底流の反映であることがわかる。
トランプ発言は必ずしも日米同盟破棄論ではない。同盟の欠陥や不公正の指摘であり、その是正がない場合、同盟自体の破棄もありうる、という指摘である。その意味では日米同盟批判だといえる。
アメリカ側での日米同盟批判は決して新しくも珍しくもない。その内容には大別して3種類がある。
第1は最も過激な日米同盟破棄論である。超少数意見ではあるが、アメリカの孤立主義の伝統の反映でもある。
端的な実例ではソ連崩壊直後の1992年の大統領選で現職ブッシュ大統領に挑戦した保守派論客のパット・ブキャナン氏が「アメリカは自国市場を略奪する日本の防衛を負担する必要はない」と主張した。東西冷戦に勝利したアメリカは「もう本国に帰れ」(カムホーム、アメリカ)というスローガンだった。
1995年10月にはワシントンの大手研究機関の「ケイトー研究所」が「東アジアの有事に日米同盟は機能しないから事前に解消したほうがよい」という主張の報告書を公表した。南沙諸島、台湾、朝鮮半島での戦争のいずれでも日本は米軍の戦闘を支援しないから日米同盟の意味はない、という主張だった。
2013年3月にはサンディエゴ州立大学のエリザベス・ホフマン教授がニューヨーク・タイムズへの寄稿論文で在日米軍撤退を訴えた。ソ連の脅威に備えた在日米軍はもう任務を終え、日本には自国を防衛する能力があるのだとする日米同盟解消論だった。この種の破棄論は国際情勢の変化やアメリカ自体の安全保障と経済能力の変遷、日本の防衛力の強固さなどを根拠としていた。
第2は日米間の不平等、不公正を衝く同盟批判である。この批判は超党派で広範にわたり、水面下で流れてきた。
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