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ASEAN分断図る中国、露骨な金権・恩義外交

Japan In-depth / 2016年8月1日 18時0分

ASEAN加盟10カ国は、南沙問題に関しては強硬派のフィリピン、ベトナム、さらに中国が一方的に設定し領海権の根拠としている「九段線」の南端で自国のナツナ諸島の排他的経済水域(EEZ)が重なるインドネシアが、会議の議題、共同宣言で「裁定を盛り込み、中国を名指しして厳しい態度を示す」ことで動いていた。タイ、ミャンマー、マレーシア、シンガポールなどは中国からの経済援助や自国が抱える人権問題、華僑支配が強い経済構造問題など様々な国内事情から「風見鶏」的中立を堅持。そして親中ながらも議長国として中立を装わなければならないラオス。こうした「中立装い国」はASEANの結束に配慮してフィリピン、ベトナム、インドネシアの主張する対中強硬論に歩調を合わせるそぶりをみせながらも、一方で中国の「アメとムチ」にも理解を示すというダブルスタンダードで臨んでいた。


こうした各国の立場と位置づけを中国は当然のごとく会議前から読み切り、ラオス入りした王毅外相はカンボジア外相との二国間会談に臨み「カンボジアは(南沙問題で)道理と正義を守っている」と高く評価してみせた。中国はタイ、ブルネイ、シンガポール、ラオスとも二国間会談を実施、「南沙問題は当事者間で解決する問題」との中国の主張を刷り込むことに成功。これらの国はどっちつかずの姿勢に終始することになった。


この時点でほとんど“勝敗”は決しており、ASEANの盟主の地位を取り戻すべく加盟国間で最後まで調整役に徹したインドネシアが「裁定どころか中国という名指しすら盛り込めなかった」と嘆息する始末だった。いくらカンボジアが強硬に中国寄りの発言を繰り返しても①全会一致の原則 ②複数の国がカンボジアに強硬にモノを言わず説得に回らなかった――ことから中国の「ASEAN分断作戦」は見事な成果を収めたのだった。


■なぜカンボジアは中国寄りなのか


ASEAN加盟10カ国の中で今回の会議ではカンボジアが最後の最後まで強硬に中国寄りの立場を堅持し続けた。カンボジアはなぜ同じ東南アジアの国々の期待を「裏切って」まで中国を擁護し続けるのか。それはカンボジアの歴史と経済状況に答えがある。


カンボジアの正式名称は「カンボジア王国」とう王政の国である。建国の父として国民の多くから慕われていた国王シアヌーク殿下(2012年に死去)という人物を覚えているだろうか。常に笑みを絶やさず誰にでも合掌して腰を低くして接する姿はカンボジア国民の統合の象徴でもあった。国民の多くが虐殺されたポルポト時代、シアヌーク殿下は中国・北京に逃れていた。その後もカンボジアと北京を足しげく往復したのは北京の病院で体調管理、病気治癒をしていたためで、亡くなったのも北京滞在中だった。中国共産党はこのカンボジアの象徴、国王を完全に手中にし、政治的実権のない国王を通してカンボジアへの影響力を増大していった。


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