オリンピックでドーピング、何が悪い?
Japan In-depth / 2016年8月12日 9時10分
関係者や政府はオリンピックを開催すれば儲かるというが、本当だろうか。1964年の東京オリンピックは大成功だったというが、オリンピックに間に合わせるために東海道新幹線のコストは二倍に膨れ上がったという。またオリンピック関連インフラのための世界銀行の借り入れを完済するのに30年もかかっている(オリンピック経済幻想論:アンドリュー・ジンバリスト:ブックマン社)
そもそも高度成長を始めた当時の日本経済はオリンピックがなくとも、高い経済成長には実現できたはずだ。百歩譲っても得られたのは日本人が多少なりとも自信を持てたことぐらいだろう。果たしてそれに見合う「投資」だっただろうか。それでも高度成長期の我が国はそのような「冗費」を出す余裕があった。
だが現在の我が国にはそのような財政的な余裕はない。まして、現在の我が国は1,000兆円を超える借金を抱えている。今後人口が減り続け、かつてのような高度成長を実現できる将来はない。今後GDPの減少はもちろん、人口減少、高齢化もあって地方のインフラの維持だけでも難しいと言われている。
このような現状でオリンピックなどという、経済的なリターンの期待できない怪しげな民間興行団体が主催する「国際運動会」に1兆2,000億円とも言われている開催費用を出す余裕は無いはずだ。メインスタジアムにしても大きすぎて、多くのイベントには使えないので、今後長年にわたって財政的なお荷物になる。その費用は我々の税金で支払われるのだ。後で使えず、投資の乗数効果も低い「国際運動会」に巨額の税金を投入することは犯罪的といってよい。
金メダルと取るためならばなんでも許されるといった脳天気な雰囲気が政府や世論にも蔓延している。日本人の民度と当事者意識は大丈夫か。
政府は昨年10月に金メダルを増やすためにスポーツ庁を設置した。また同年11月27日の閣議で「過去最高の金メダル数を獲得する」と決めた。だが金メダルを取るために多額の血税をつぎ込む正当な理由があるのだろうか。
オリンピックで、血眼になって金メダルを取りたがる国家は大抵ろくなものではない。多くは世界に「一等国」だと認められたい、自国民に自国民がいかに優れているかを宣伝し、国内の不満を反らせたいとかだ。古くはゲルマン人の優越性を主張したドイツや、旧ソ連、それに貧しくて、特に誇るものが無い国々だ。現在ならば中国や北朝鮮だ。
つまり貧しく、自分たちに自信ない独裁国家が多い。だがいやしくも我が国は世界第三位の経済大国であり、民主国家である。どこに貧しい独裁国家を真似し、国民の選民主義を煽る必要があるだろうか。金メダルを多く取れば日本は「美しい国」にでもなるんだろうか。安倍首相の国家観はヒトラーや金正恩並といっていいだろう。
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