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福島県いわき市の深刻な医師不足

Japan In-depth / 2016年8月26日 11時0分

なぜ、ときわ会には、医師や看護師が集まるのだろう。それは、創業者である常磐峻士会長が、「一山一家」をモットーに地域への貢献を重視しているからだ。人材育成を含め投資に余念がない。

ウェイトを置くのが泌尿器科だ。11年前、東京女子医大から現在の院長である新村浩明氏を招き、急成長した。年間の手術数は2360件(2015年度)で、首都圏の大学病院よりも多い。12年8月には手術支援ロボット『ダヴィンチ』を東北地方で最初に導入した。手術数は年間に100件を超える。若い医師は多くの経験を積める。首都圏から研修希望者が殺到している。森医師が赴任して立ち上げた血液内科も同様だ。患者は急増中で、最近、無菌病棟を開設した。

投資は医療だけではない。基礎研究室も立ち上げた。主宰するのは加藤茂明氏である。2012年3月、研究不正の責任をとって東大分生研の教授を辞した人物だ。両親が福島県出身という縁で、東日本大震災以降、浜通りで教育・研究支援を続けてきた。対象は、地元の小中学生から若き医師まで幅広い。ときわ会は、加藤氏に活動の拠点を提供したことになる。加藤氏のかつての部下も就職したため、ときわ会の投資は年間数千万円になる。

森医師は、早速、加藤氏の指導のもとで研究を開始した。すでに5つの論文を投稿した。園田氏も英国の医学誌の『ランセット』にレターを発表した。若き医師や看護師がキャリアアップしたければ、研究の実績が欠かせない。ところが、指導できる人物が少ない。民間病院はもちろん、ほとんどの大学病院に加藤教授ランクの指導者はいない。森医師は「加藤先生にはノウハウがある。きめ細かい指導で勉強になる」と言う。これこそが常磐病院に若手を呼び込む理由だ。

ときわ会にも悩みがある。それは、病床が足りないことだ。「医師と看護師はいるけど、入院出来る病床がない」という。なぜ、こんなことが起こるのだろう。それは、わが国では、各病院の病床数は厚労省と都道府県が規定しているからだ。勝手に病床数を増やすことが出来ない。近年、医療費抑制を目指す厚労省は各地の病床数を減らそうとしている。病床を増やそうと思えば、病院間で調整しなければならない。つまり、他の病院から病床を譲り受けなければならない。ところが、これが難しい。

いわき市内は、医師や看護師が不足しているため、多くの病床が余っている。市内で最大の磐城共立病院は、50床が閉鎖されている。2番目に大きい福島労災病院も、30床が閉鎖されている。市民目線で考えれば、このような病床を常磐病院が利用すればいい。ところが、それが難しい。医師会や病院経営者の政治力が強く、行政が調整できないからだ。

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