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微笑みの国で贖罪と慰霊 クワイ河に虹をかけた男

Japan In-depth / 2016年9月11日 18時0分

永瀬氏が2011年に93歳で亡くなるまで、一貫して心に抱いてきたのは「贖罪と慰霊」であり、それは元捕虜やタイ人たちとの「和解や恩返し」を通して最後には「祈りと感謝」に昇華したのではないだろうか。

■クワイ河の流れに花と共に

2008年6月の134回目のタイ巡礼で永瀬氏はクワイ河鉄橋の上にかかる虹を初めて目撃し、「素晴らしい、天国への橋じゃ」と感激する。そして翌2009年、長年共に歩んで来た妻 佳子さんとのタイ巡礼が最後の訪問となる。永瀬夫妻の遺骨は遺言に従い、2011年8月にクワイ河鉄橋近くの愛してやまなかったクワイ河に色とりどりの花と共に流された。

ドキュメンタリーの中にも登場するが「なんで(元捕虜に)わびることがあるんだ。わびることはない」(元鉄道大9連隊将校)という考え方、主張、立場の人もいるだろう。そして英国にも「絶対に忘れないし、許しはしないと。死ぬまでそれは変わらないでしょう。敗れた軍隊として我々はもう少し人間的な扱いを受けるべきでした」(元捕虜の英国人)と和解を拒否する人々も存在する。

それぞれの人に個人的な考え、思いがあり、それに基づくそれぞれの戦後はまだ続いている。確かなことは永瀬氏という一人の日本人が人生を自らの信念、使命で貫いたということであり、その一人の日本人の存在がタイの人々の中に今も生き続けていることである。

「日本人でありながら、タイの国と人々を愛してくれたこと、決して忘れません」(散骨前にカンチャナブリで開かれた永瀬氏のお別れの会でのタイ人留学生の言葉)。

若い世代の人に是非足を運んで欲しいドキュメンタリー映画である。

トップ画像:ⓒ大塚智彦

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