ドゥテルテ大統領、反撃開始 批判勢力急先鋒電撃解任
Japan In-depth / 2016年10月9日 19時34分
大塚智彦(Pan Asia News 記者)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
フィリピンのドゥテルテ大統領による不規則発言、暴言、失言のニュースが繰り返し海外メディアを賑わせている。不思議な現象に見えるかもしれないが海外で「ドゥテルテ発言」が報道され、国家指導者としての資質や能力に疑問が投げかけられるたびに彼のフィリピン国内での評価、人気は揺るぎなくなり、80%近い支持率は「高止まり」の状況が続いている。
ドゥテルテ大統領が大統領に就任した6月30日から9月6日で100日を迎えた。いわゆるお手並み拝見の「ハネムーン期間」が終わるとともに、これまで事態を静観していた批判勢力がドゥテルテ大統領による「米国からロシア、中国への外交シフト」「殺人を容認する麻薬犯罪者への強硬姿勢」「新人民軍などの反政府組織との和平路線」「南シナ海領有権問題」などを問う評価し今後どう対応していくのかが注目となる。
一部の人権団体や国際組織フィリピン支部などが麻薬犯罪者への殺害や外交シフトについて「超法規的殺人」「米との同盟関係を阻害」などと批判を表明しているものの、地元メディアも野党勢力も、国民に影響力が強いキリスト教関係者や国軍も、そして大統領選で敗北した政治エリートたちもこぞってこれまでのところ静観している。それもこれも国民の圧倒的支持を背景に大統領に当選、「高止まり」人気を維持しているからに他ならない。不満や反論を抱きながらも誰もが「国民」を敵に回したくないという本音があるからだ。
■大統領批判の急先鋒を狙い撃ち
9月15日、フィリピン国会上院は異様な雰囲気に包まれていた。ドゥテルテ大統領が進めている麻薬犯罪容疑者に対する超法規殺人について審議する上院聴聞会が開かれたからだ。聴聞会ではドゥテルテ大統領がミンダナオ島ダバオ市長時代に組織したとされる「私設処刑団」元メンバーのフィリピン人男性(58)が麻薬犯罪者殺害に自ら関わり約50人を殺害したことを告白。聴聞会場は重苦しい空気に包まれた。そしてこの元メンバーが「ドゥテルテ(当時は市長)の指示で麻薬犯罪者のみならずレイプ犯など1000人以上が殺害され、ドゥテルテ市長自身も処刑に参加していた」と証言するに至り空気が一変、衝撃が走った。それは現職の大統領が過去に状況はどうあれ殺人を犯していたことを証言したことに他ならないからで、メディア特に海外メディアは一斉にこの証言を大々的に報じた。
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