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知事選絡みのジャカルタ騒乱 インドネシアのタブーSARAとは

Japan In-depth / 2016年11月8日 14時0分

バスキ知事はスマトラ島ブリトゥン生まれ(地域の階層)のプロテスタント(宗教)で中国客家系の中華系インドネシア人(民族)である。国会議員を経て2012年に副知事に当選、2014年にジョコウィ知事が大統領に就任したのを受けて副知事から知事に昇格した。

9月27日にバスキ知事が住民の前で行った演説で「ユダヤ教徒とキリスト教徒を仲間としてはならない」とするイスラム教の聖典「コーラン」の一節(第5章第51節)に触れて「コーランの一節に惑わされているから、あなたたちは私に投票できない」と述べた。これが「コーラン、イスラム教徒を侮辱した」として強い批判と反発を招いたのだ。

バスキ知事は再選を目指して来年2月15日投開票の知事選に出馬しており、激しい選挙戦を展開している時期であったが、イスラム強硬派組織の「イスラム擁護戦線(FPI)」が知事の辞任を求めて大規模な集会とデモを計画。圧倒的多数を占めるイスラム教徒の聖典に言及したバスキ知事の発言は、SARAによるところのプロテスタントで中国系華人、スマトラ島の地方都市出身であることが相乗効果となって「知事辞任要求」「逮捕要求」へと一気に拡大してこの日の大規模デモへとつながったのだった。

 

■無視できない圧倒的多数のイスラム

FPIによるデモ呼びかけに対し、ジョコウィ大統領やユスフ・カラ副大統領は「デモはあくまで平穏に行うように」と呼びかけ、国家警察もFPIの代表を事情聴取するなど政府や治安当局は事態の沈静化に懸命に動いた。

インターネット上ではバスキ知事の発言とSARAを関連付けてデモや集会を扇動したり、知事を中傷誹謗したりする書き込みが急増。事態を重視した通信情報省が11のウェブサイトへのアクセスを強制的に遮断する措置を講じた。

なぜここまで「コーラン侮辱発言」が大きく発展してしまったのかを考えると、インドネシアが直面する課題が浮かび上がってくる。イスラム教を国教とするイスラム教国ではなく、キリスト教や仏教など他の宗教も認める世俗国家であるインドネシアだが、国民の約88%というマジョリティー以上、圧倒的多数を占めるイスラム教徒の力は社会のあらゆる分野でやはり相当のウェイトを占めているのが現実だ。

少女への暴行事件をきっかけに未成年の性犯罪に死刑や科学的去勢を含む厳罰化が国会で議論され、公の場での禁煙や禁酒が再び議論の対象になるなど、インドネシア社会を取り巻くモラル、規範の見直しの動きがこのところ顕著な傾向を示している。こうした流れの根底にあるのがイスラム教の教えであり、インドネシア社会の「モラル見直し」が図らずも「イスラム教のモラル実現」と密接に関連していることとが無視できない現実として横たわっているのだ。 

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