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知事選絡みのジャカルタ騒乱 インドネシアのタブーSARAとは

Japan In-depth / 2016年11月8日 14時0分

 

■デモの背後に政治的黒幕?

SARAに触れる問題というだけでも複雑な背景なのに、今回のデモについてジョコウィ大統領が「デモの背後に政治勢力がいる」と指摘したように、政治的背景の存在が今回のバスキ知事を巡る騒動の火にさらに油を注ぐ結果を招いている。

今回のデモに至るバスキ知事批判の一連の流れを背後で画策している黒幕として名前が挙がっているのがユドヨノ前大統領だ。ジョコウィ大統領は与党闘争民主党(PDIP)所属で、バスキ知事は紆余曲折があったもののPDIPの支持を受けて知事選に立候補した経緯がある。このPDIPと犬猿の仲とされるのがユドヨノ前大統領率いる民主党で、バスキ知事の「コーラン侮辱発言」を単にバスキ知事批判だけでなく、知事を支持するPDIP批判、さらにPDIPのジョコウィ大統領批判につなげようと画策した、と指摘されているのだ。

その理由はいたって単純明快で知事選にはユドヨノ前大統領の長男で元軍人であるアグス・ハリムルティ・ユドヨノ氏が民主党など4党に擁立されて立候補しているのだ。名指しされた形のユドヨノ前大統領はデモの2日前の同月2日にわざわざ会見して自らが黒幕とする見方に「誤った情報だ。特定の勢力を黒幕に仕立てるべきではない」と反論した。

バスキ知事を批判する勢力はインドネシア国民が等しく反発するSARAを持ち出すことで政治色を覆い隠し、知事選での巻き返しを突破口に現政権批判につなげようとしている、とみられている。デモの背後にそうした深刻な動きを感知したからこそジョコウィ大統領は5日から予定されていたオーストラリア訪問を急きょ延期して、副大統領を通じて指示したバスキ知事への2週間以内の捜査終了を見守る姿勢を示すなど事態の対応に取り組んでいる。

バスキ知事に対する国家警察の事情聴取が7日に行われ、9時間近い事情聴取を終えたバスキ知事は「全て明らかになったと思う」と報道陣に話し、捜査終結への期待をみせた。捜査当局は今後、問題となったバスキ知事の発言を編集してネットにアップし一連の騒動の発端となった大学講師など関係者の事情聴取を進める。大統領の指示で2週間以内に結論を出すとみられる捜査結果次第では「知事の即時辞任」や「知事逮捕」を要求する強硬派が再び大規模な街頭デモを組織する可能性もあり、ジャカルタは再び緊張状態に包まれる懸念がでている。

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