「私にとって台湾は一番目がない二番目の故郷みたいなものです」 失われた故郷「台湾」を求める日本人達 湾生シリーズ2 竹中信子さん
Japan In-depth / 2016年11月22日 18時0分
私にとって、台湾は「一番目がない二番目の故郷」みたいなものです。でも、いつも迷っている。蘇澳を訪ねて死んでもいい。でも地元の人たちにも迷惑をかけちゃうし。民族としては日本人です。国籍もある。でも普通の日本人が日本にいて日本が故郷だと思うのとはかなり違う。引き揚げてから、戦後日本で、台風情報は、台湾と日本と国交がなくなってもテレビで台湾のことを伝えます。いつも、台湾に行ったらどうしようか、蘇澳に行きませんようにと心配している。一日に何度も天気図を見たりして。知り合いの顔も浮かびます。
私という人間は台湾と日本に分裂しているとも言えるし、台湾と日本の両方で一人の人間にもなっている。両方あわせたら一つのアイデンティティになれる。ふるさとって言えるものは、私にとって台湾しかない。でも自分は日本人です。複雑ですよね。台湾が気になって気になって仕方ない。蘇澳のみんなが幸せでいてほしい。蘇澳の街全体が幸せでいてほしい。
野嶋:台湾に通うようになって、台湾への思いは変化しましたか。
竹中:自分のなかでは台湾と日本の区別がなくなってきています、台湾から日本に帰ってくると、トランクをガラガラひっぱって、なんだか隣の街から歩いて帰ってきたような感覚になっています。最初のころは「さあ台湾に行ってくる」と意気込んでいたのですが、いまは何も距離感がありません。
蘇澳ではいつも冷泉の近くのホテルに泊まります。シーツを自分で持っていかないといけないと思うほどのホテルなのですが、窓から自分の家や冷泉が見えるんです。自分が昔いたところが見える。それだけでいいんですね。
(シリーズ3に続く。全3話。シリーズ1も合わせてお読み下さい。毎日18:00掲載予定)
台湾ドキュメンタリー映画「湾生回家(わんせいかいか)」監督:ホァン・ミンチェン が11月12日より東京・岩波ホールで日本公開。
トップ画像:竹中信子さん ©野嶋剛
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