「できれば最後は花蓮で逝きたい」失われた故郷「台湾」を求める日本人達 湾生シリーズ3 清水一也さん
Japan In-depth / 2016年11月23日 18時0分
野嶋剛(ジャーナリスト)
「野嶋剛のアジアウォッチ」
プロフィール:清水一也さん/1943年3月28日生まれの73歳。花蓮港吉野村(現花蓮縣吉安郷)生まれ。父の清水半平氏は日本人移民村(吉野村)の村長を務めていた。1946年、3歳のときに花蓮港から鹿児島県加治木に引き揚げた。台湾の記憶はほとんどないが、家族と自分のルーツを探るため、定期的に花蓮を訪れている。現在は群馬県高崎市に在住。
野嶋:清水さんは小さい頃、台湾から日本に引き揚げたわけですが、どんな状況だったでしょうか。
清水:子供の目線ですが、あえて台湾帰りであることを隠すことはなかったです。ただ、引き揚げてきた日本人は、大陸や朝鮮の方が圧倒的に多かったので、引揚者のなかで、私たち台湾組はひっそりと静かにしないといけなかった。郷里の高崎に戻って、最初は引揚者の寮を斡旋されました。でも、家族は数日でそこを出てしまい、田舎の親戚に頼って分散して暮らしました。たぶん、姉や父母、祖父母たちは、たいへん悲惨な状況で返ってきた他の引き揚げの人たちをみて、いたたまれなくなったのでしょう。台湾ではそういう厳しい引き揚げ体験をしたことが無いからです。
もちろん、終戦直後、中には罵声を浴びた日本人も居たようですが、満州・朝鮮引揚げのような事はなかった。ショックを受けたのではないでしょうか。祖父母も母も高崎が出身地だったので、頼る親戚があったのが救いでした。
野嶋:引揚者に対する差別を受けたことはありましたか。
清水:差別というかどうかは別にして、言葉の違いや日常生活、食生活の違いでバカにされたことはありました。使っている言葉が、日本人の言葉と先住民の言葉が一緒になっていたのです。おじいさんとおばあさんは先住民のアミ語で、少し記憶があいまいですが、確か「ラホヤ、ババヘイ」と呼んでいたら、学校で「ちゃんと、おじいさん、おばあさん」と言いなさいと怒られました。また、トイレに行くことも「パンサイ」と言っていましたが、すぐに使うのをやめました。ほかにも器をビンタン、また台湾ではヘチマは普通だったので、引揚げ後に自宅でへチマを栽培し食べていたら、近所の人から不思議がられましたね。
野嶋:台湾でのことで記憶に残っていることはありますか。
清水:私は幼い時期に引き揚げたので、台湾での記憶はほとんどゼロです。でも、日本に戻ってから毎日のように家族に台湾のことを刷り込まれて、彼らの記憶と自分の記憶がだぶっています。台湾は自分の生まれた場所であり、私は移民三代目で、日本の敗戦がなければ、そのまま花蓮にい続けるはずでした。家族もみんな、もちろん日本に帰ってきたくはなかった。現地で亡くなった父方の祖母や叔父・叔母たちの遺骨はみんな花蓮に眠っています。お墓は吉安(きつあん)の日本人墓地にありましたが、いまは墓石もありません。ぜんぶ撤去されて、道教の大きな墓地がその上に建っています。4年前に菩提寺のご住職と97歳の母を連れ、吉安郷でお墓前りと先祖法要をしました。
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