退去処分のタイ人少年 仏の場合
Japan In-depth / 2016年12月12日 0時24分
Ulala(ライター・ブロガー)
「フランス Ulala の視点」
不法滞在であったタイ人の母とともに強制退去処分を受けたウォン・ウティナン君(16)が国に処分の取り消しを求めたのに認められなかったことを受けて、日本で生まれて日本で育ったのにもかかわらず日本にいられないという無念さに同情する人が続出しました。が、同時に不法滞在であったことで当然だとする意見も多くあがったのです。そこで疑問をもちました。ほんとうに日本滞在を認めないことが最善の道なのでしょうか?
彼の場合は、日本で生まれたものの母親が不法滞在だったため学校にすら行けない生活を送ってきましたが、中学2年生から学校に行けるようになり、そこから高校にも行き日本に溶け込んだ生活を送っています。そんな中の強制退去処分の判決。
山梨外国人人権ネットワーク・オアシスの山崎俊二事務局長は「親が不法滞在でも子は生まれた場所で暮らす権利がある。それを実現させるのが社会の責任。行ったこともない国にいきなり住めと言うのは乱暴で、人道的措置が必要だ」と訴えています。
この状況を見ていて、以前フランスでも同様のことが問題になっていたのを思い出しました。フランスでは不法滞在にかかわらず、未成年者が学校で勉強することが認められていますが、18歳を過ぎれば正式な滞在資格を持つことを要求されます。もし外国人でもフランスで生まれていればフランス国籍を受け取れますし、他国で生まれていても、13歳以前にフランスに来た場合は学生身分の滞在許可書が発行されていました。しかし13歳以降にフランスに来た場合、18歳以降は通常の外国人と同様の扱いとなっていたのです。その当時のテレビでは「高校卒業後に待つ自分の運命が怖い。ずっと住んできた国なのに、突然言葉も話せない国に送り返されてもどうしていいかわからない」とインタビューに答えている子供達が映し出されていました。
しかしながら、2012年にこの状況が変わりました。13歳までという枠が取り払われ、そのままフランスに滞在する道が開けたのです。それは、当時の首相が提示した「バルス通達」と呼ばれるもの。フランスの学校で3年以上勉強し、2年間「勤勉でまじめであった」と言う証明が取れれば、未成年者の滞在、および、住むのに十分な収入があると確認できる両親の滞在を認めるとしたのです。
この「十分な収入がある」と言う点がみそでもありますが、フランスが子供の権利を十分に重視しているという現れでもあります。フランスでは子どもの基本的人権を国際的に保障するために定められた条約「児童の権利に関する条約」を元に、さまざまな条項が作られています。法律で6歳から16歳までの未成年は、不法滞在であっても無償で教育を受ける権利があるとされているのもその一つです。18歳以下の未成年については、子供の権利を尊重して面倒を見るべきだとしているのです。そして、その後も、まじめで勤勉であればフランスに滞在することを認めることとしたのです。
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