シリア国境、IS掃討作戦の現実
Japan In-depth / 2016年12月20日 19時12分
Japan In-depth 編集部(坪井映里香)
前回の出演から約8か月ぶりとなったフォトジャーナリストの久保田弘信氏。今年4回の海外取材を終え、トルコから帰ってきたばかりだ。そんな久保田氏に、緊張状態が続く中東情勢について写真や動画を交えながら、話を聞いた。
今回の久保田氏は、トルコとシリアの国境沿いの難民キャンプとクルド族とIS(イスラム国)の戦闘現場を取材した。だんだんトルコに入国しづらくなっていて、空港から強制送還されている日本人ジャーナリストもいるという。特に国境沿いは「準戦時状態」で、市街地までミサイルが飛んでくることもあるそうだ。また、国境沿いはテロリストが入ってくる可能性もあり、緊張が続いている。
トルコの治安について久保田氏は、夏に取材に行った時と最近との間に「治安の悪化が見て取れるようになった。」と述べた。一つの理由として、検問が多くなったことをあげた。しかし「検問でチェックを厳しくやっているのにテロが起きてしまっているのでまだまだ安心できない。」と指摘。また、久保田氏が滞在している隣の町でテロがあったことがあった。国家反逆罪という名目でクルド系の政治家が逮捕されたが、ISが犯行声明を出した。そしてそのまた後、クルド系の勢力も声明を出した。安倍編集長は自分たちの仕業だ、と「誇示したい」のでは、と指摘。「それだけ今のトルコの現政権に対してISもクルド系勢力も不満を持っている。」と久保田氏は解説した。実際、7月のクーデター未遂事件が起き、エルドアン大統領は2000人の市民を拘束した。
ここで、久保田氏の撮影した、難民キャンプの写真を見た。
真ん中に監視塔があり有刺鉄線で囲まれている。そこにいるのはみなシリア難民だという。なぜ囲われているのか、といった問いに対し、久保田氏は「難民をつかさどっているのは、UNHCR (The office of the United Nations High Commissioner for Refugees:国連難民高等弁務官事務所)という国連機関。(通常であれば)UNHCRに許可を取れば難民に取材できるが、トルコの場合は特殊で、UNHCRはアドバイザーとして存在しているが、トルコ政府が難民キャンプを運営している。」とこの地域における難民統治の特殊性を明らかにした。
そのうえで、「難民のふりをしてテロリストが紛れ込んでいるという危険もある。」とした。実際ISが紛れ込んで子供たちを連れて行って兵士にするといった例もあったようで、トルコ政府も警戒を強めているからだと考えられる。シリア難民は、有刺鉄線に囲まれた場所での生活を強いられている。
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