ギャンブル依存症大国の汚名返上せよ
Japan In-depth / 2016年12月22日 23時20分
田中紀子(ギャンブル依存症問題を考える会 代表)
IR(カジノ)法案が、12月15日未明に成立し、日本にもカジノが建設される道が開かれた。カジノができることには正直複雑な思いもあるが、これだけギャンブル依存症問題が顕在化し、議論されるに至るには、カジノのような起爆剤がこの国では必要だったということは素直に受け入れている。
また参議院内閣委員会の採決直前の土壇場で修正法案が出され、ギャンブル依存症に触れられたことは、私としては大きな驚きと共に、関係各位の尽力に感謝している。
修正を加えられた部分は2カ所あるが、ギャンブル依存問題に関係する部分は、以下の通り。下線部分の「ギャンブル依存症等」という文言が加えられた。
「(第十条第一項第八号関係)カジノ施設の入場者がカジノ施設を利用したことに伴いギャンブル依存症等の悪影響を受けることを防止するために必要な措置に関する事項」
「たったこれだけのこと?」と分かりにくいかもしれないが、そもそも今回の法案は「推進法」であって、これから「実施法」が作られることになるので、大ざっぱなことしか書かれていない。土壇場に来て法案を修正してまで、「ギャンブル依存症等」の文言を加えてもらったことは、実施法に向けてギャンブル依存症対策を盛り込むための大きな布石となった。
また、参議院での附帯決議には、「カジノにとどまらず、他のギャンブル・遊技等に起因する依存症を含め、ギャンブル等依存症対策に関する国の取組を抜本的に強化するため、ギャンブル等依存症に総合的に対処するための仕組・体制を設けるとともに、関係省庁が充分連携して包括的な取組を構築し、強化すること。また、このために充分な予算を確保すること。」という項目も加えられた。附帯決議には法的拘束力はないが、「遊技」の文字も盛り込まれたことは、関係者も本気だと理解している。
課題はなんといっても「財源」で、依存症対策を推進する上で、売り上げや入場料から対策費を拠出することは必須で、おそらくカジノに関しては、これが実現するであろうが、既存ギャンブル及び遊技に関しても、対策費の拠出が実現するかどうかが日本のギャンブル依存症対策推進の上で欠かせない条件だと考えている。
何故なら、日本は既にギャンブル依存症が蔓延しており、現在536万人、実に成人人口の20人に一人が罹患していると言われている。(厚生労働省研究班調べ2014年)この上、新たに「カジノ」というギャンブル場が建設されるのであるから、当然このままでいってしまえば問題は広がるばかりである。
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