安倍首相を右翼と呼ぶ米メディアの偏見
Japan In-depth / 2016年12月27日 18時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
アメリカの大手新聞や日本研究学者の一部が日本の安倍晋三首相をよく「右翼(Right Wing)」と呼ぶ。「右翼」という言葉は単に政治的に保守というだけでなく、過激とか極端とか、さらに非民主的というような意味がにじむ。アメリカ側のこうした表現は偏見の表われだとする批判が日本研究ベテランのアメリカ人学者によって表明された。
アメリカの大手メディアの偏向報道は今回の大統領選挙でもいやというほど露呈された。ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストなどの有力新聞、CBS,CNNという主要テレビはみな年来の民主党リベラルびいきをさらにあらわにした。民主党のヒラリー・クリントン候補の支持に走り、しかも「クリントン勝利」という見通しまで明確に打ち出していたのだ。
他方、同じ主要メディアは共和党のドナルド・トランプ氏は徹底して叩いた。トランプ氏の欠点や弱点を誇大に宣伝し、同氏には決して投票するな、というところまでの主張を表明していた。だがそれでもアメリカの有権者たちは全体としてトランプ氏を選んだ。大手メディアの誤報、誤算だったわけだ。
さてそうした政治的特徴を有するアメリカ大手メディアが主張するように、安倍晋三氏は果たして「右翼」なのか。もしそうだとすれば、その根拠はなんなのか―
安倍首相やその支援者に「右翼」というレッテル言葉を貼るアメリカのメディアの代表例を点検してみよう。わかりやすい実例はニューヨーク・タイムズの2014年12月3日付の「日本の右翼が戦史を書き換え、(朝日)新聞を攻撃する」という見出しの記事だった。同紙のマーティン・ファクラー東京特派員が書いたこの記事は朝日新聞の慰安婦問題での大誤報を批判する動きについて「安倍政権が朝日新聞への威嚇運動を奨励している」と決めつけ、安倍首相らを「右翼」と呼んでいた。
ニューヨーク・タイムズはその他の社説やソウル発記事でも安倍首相を「右翼首相」と断じていた。アメリカにとって民主主義の同盟国の民主的な選挙で選ばれた首相を非民主的なひびきの「右翼」と呼ぶことはさすがにアメリカ内部でも非難が起きた。前述のファクラー記者の記事に対してこんな批判が出たのだ。
アメリカのニュースメディア研究機関「メディア調査センター(MRC)」がニューヨーク・タイムズのこの種の用語法は「不当なレッテル貼りの偏向」だとする報告書を発表したのである。1987年創設のMRCは民間の保守系とされる独立調査機関である。活動目的の一つは「アメリカの伝統的な価値観を崩す主要メディアのリベラル的偏向を科学的な調査で証明し、指摘する」ことだという。MRCのこの報告書は前述のファクラー記者の記事に対して以下のような批判を述べていた。
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