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【大予測:医療報道】「子宮頸がんワクチン問題」報道に転機

Japan In-depth / 2016年12月28日 12時25分

厚労省は祖父江班を立ち上げる以前から、牛田享宏・愛知医科大学医学部学際的痛みセンター教授と池田修一・信州大学第三内科(脳神経内科)教授を主任研究者に指定して、子宮頸がんワクチンの副反応の研究を行わせてきた。2班のひとつ、牛田教授らのグループも、子宮頸がんワクチン導入以前から原因不明の長引く痛みやけいれん症状、歩行障害などを訴える子供が多数いることを何度も紹介しているが、メディアは注目しなかったにすぎない。


ところが、厚労省は2班に加えて、全国規模の新たな疫学調査が必要だと判断。祖父江班を立ち上げ、祖父江班の結果をもって接種再開の判断をすると言い続けてきた。今回の発表がメディアの注目を獲得し、正確な報道がなされたという点については高く評価するが、もし厚労省が、「結論」②の「子宮頸がんワクチンとの因果関係は分からないこと」をもって接種再開の判断をまだ留保するというのであれば、祖父江班を立ち上げ、長引く子宮頸がんワクチン問題に更なる時間と国費を投じた理由を明らかにする必要がある。


厚労省は今後、年齢、発症までの時間、受診した診療科の別などに関する追加解析を行って数か月のうちにまとめるとしている。しかし、祖父江班の調査がそもそも因果関係を見るデザインにはなっていない以上、これから何年かけたところで「ワクチン未接種者にも症状があった」という今ある結論を上回る新しいことが言える可能性は低い。


ちなみに、3つの子宮頸がんワクチン副反応研究班のうち残る1班の池田班は、子宮頸がんワクチンを打って「脳障害」を起こした少女に共通の遺伝子型があるといった発表や、子宮頸がんワクチンを接種したマウスの脳だけに異常が見られたと言った発表を行ったが、筆者の指摘によりいずれも虚偽であることが判明。厚労省は同班の発表に関し、2度にわたる異例の厳しい見解を発表している[iii]。


全国規模の調査ではないが、名古屋市も昨年、市内に住む若い女性約7万人を対象とし、子宮頸がんワクチンと症状との因果関係を見ることのできるデザインをもった疫学調査を実施し、子宮頸がんワクチンとの因果関係を疑うとされてきた24症状と子宮頸がんワクチンとの間に「薬害」と呼べるような因果関係が無いことを示した[iv]。


子宮頸がんワクチンは、現在、世界約130ヶ国で承認され、約75ヶ国で定期接種となっている。日本でも2013年4月に定期接種化されたが、薬害を疑う声を受けた政府は、早くも6月には「積極的接種勧奨の停止」という政策決定を行っている。以来、わが国の子宮頸がんワクチンは事実上の接種停止状態だ。海外だけでなく国内でも子宮頸がんワクチンの安全性に関するデータが蓄積する中、なぜ日本政府だけが接種勧奨に関する決断を何年も保留し、守れる病気から国民を守るという世界の常識に抗い続けるのだろうか。


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