【大予測:自動車業界】トランプ氏のツイートで激震 その1
Japan In-depth / 2017年1月11日 23時0分
一方で、最もそのメキシコ依存度が低いのがトヨタ自動車、わずか5%程度です。トヨタ自動車は米国・カナダでは10以上の工場を既に稼働していますが、メキシコでは、比較的小規模なトラック工場を1つ持っているだけで、主要な日系自動車メーカーの中では、最も後発であったことがその背景にあります。ちなみに、今回トランプ氏のtweetでは、トヨタが“バハ(Baja)”にカローラの新工場を建設する、とありますが、これは間違い。“バハ”はカリフォルニア州とメキシコ国境に近い町ですが、ここにあるのが既存のトラック工場。カローラを生産する新工場は、メキシコでも中央部、アパセオ・エル・グランデに立地します。
トランプ氏の攻撃対象になったトヨタ自動車は、実際はメキシコから米国に輸出している車の比率が、主要自動車メーカーの中で最も低いにも拘わらず、今回、トランプ氏の餌食になったと言う訳です。新工場が2019年に稼働し、年間20万台の生産が始まり、その大半が米国に輸出されたと仮定しても、この状況には大きな変化は無いと考えます。
トランプ氏のTweet
それでは、何故今回、トランプ氏はトヨタ自動車の名前を挙げたのか、何故、実質的にはそのメキシコ依存度が遥かに高い、日産自動車やマツダの名前を挙げなかったのかと言えば、当然ながら、tweet効果が最も大きい相手が、トヨタ自動車だということです。日産自動車やマツダには大変失礼ながら、トヨタ自動車を攻撃することで、最高レベルの関心を引くことができる訳です。実際、トランプ氏のつぶやきが市場に伝わった途端、ニューヨーク株式市場ではトヨタのADRが急落、日経新聞もNHKも、各種メディアのトップニュースになり、翌日の東京株式市場でもトヨタ株が大幅に下落して始まった訳です。
たった4行のtweetでこれだけの効果が出るとは、対費用効果は絶大、さすが凄腕経営者です。これが仮に、日産自動車なりマツダであったなら、さすがにここまで世間からのリアクションは大きくなかったでしょう。
今ひとつ重要なことは、トランプ氏にとって、トヨタ自動車は、ほぼイコール日本政府であるということでしょう。今回のつぶやきは、ただ単に、“TOYOTA”という1企業に対してのメッセージではなく、日本政府に対して、今後の日本への対通商政策に対してのメッセージである、と理解した方がいいでしょう。実際、tweet翌日の定例記者会見で、菅官房長官がコメントを求められていましたが、米国が実際TPPから脱退した後に何が待っているのか、それを日本政府に暗示、ないしは政府の通商関係者に対する狼煙、そう考えた方がいいのではないでしょうか。
(その2に続く。全3回。毎日23時配信予定。)
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