自衛隊、オスプレイの空中給油能力を活用? その1
Japan In-depth / 2017年1月12日 20時31分
清谷信一(軍事ジャーナリスト)
昨年12月13日、沖縄県名護市にある米海兵隊基地、キャンプ・シュワブ近海で在日米海兵隊の垂直離着陸輸送機、オスプレイMV-22機が事故を起こして浅瀬に着陸し、乗員5人が負傷した。在日米軍は事故原因について夜間の空中給油訓練中、乱気流などによってオスプレイのプロペラが空中給油機のホースと接触して損傷したためと説明した。
そして在日米軍はわずか6日後の19日からオスプレイの飛行を再開し、事故後3週間の1月6日からはオスプレイの空中給油訓練も再開した。防衛省はこの墜落事故に関しては実質的に蚊帳の外にあったと言ってよく、アメリカ側がこう言っているというだけで、まともな説明をしてこなかった。いや、できなかったと言ったほうが良いだろう。いずれにしても当事者能力を欠いていたと言わざるを得ない。
防衛省は現中期防衛力整備計画で17機のMV-22を陸自の航空隊向けに調達することになっている。このため極めて高価な装備であるオスプレイ導入に際して調査をしたことになっている。だがその実態は、オスプレイの導入は政治決定だったために期間も短く、予算も1億円と僅かだった。つまりはアリバイ工作程度の、形だけの調査をしたにすぎない。つまり、防衛省はオスプレイについて熟知しているわけではない。自衛隊オスプレイは今回の事故で、多くの国民が危険ではないかと疑うオスプレイによる空中給油を行うのだろうか。
中谷防衛大臣(当時)は記者会見で筆者の質問に答えて「オスプレイを合計何機導入するか、計画はない。買ってから考える」と述べている。換言すればどのような目的で、そのような作戦構想があり、どの程度の部隊が必要か、そのためのコストがいくら掛かるのかは、全く考えていないが、面白そうなので買ってみた、ということだ。
これを機密だから言えないのだと弁護する向きがあるが、民主国家においては軍の主要装備調達に関して概要程度は明らかにし、議会で議論するのが当たり前である。人事と予算は文民統制の根幹であるが、現状我が国の政治がそれを把握しているとは言い難い。それをしないのは、我が国の防衛調達が欧米先進国は勿論、他の民主国家よりも中国や北朝鮮に近いことを意味している。
防衛省は競争入札の形をとるために、もうひとつのティルトローター機であるレオナルド社のAW609を候補として挙げていた。だが同機は完全にビジネスユースで機体規模が小さく、ランプドアもない。オスプレイは完全武装兵士24名が搭乗できるのに対して、AW609は乗客が最大9名であり、完全武装兵ならば5、6名がいいところだ。またオスプレイのような空中給油装置は搭載していない。更に申せばAW609は依然開発中の機体であり、防衛省の予定する現在の中期防衛力整備計画での調達はまず不可能だろう。しかも防衛省はオスプレイで行った実地調査をAW609では行っていない。
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