トランプ氏「張り子の虎」露呈
Japan In-depth / 2017年2月15日 0時0分
岩田太郎(在米ジャーナリスト)
「岩田太郎のアメリカどんつき通信」
ドナルド・トランプ米大統領(70)は、バラク・オバマ前大統領(55)に欠けていた「強さ」を売り物にして当選した。だが、強面の政策を「疾(はや)きこと風の如く」に打ち出した就任後3週間のお披露目期間が過ぎ、「発言だけが勇ましく、実際は気が弱い」本性が徐々に明らかになりつつある。
トランプ大統領は、我が国の安倍晋三総理(62)との日米首脳会談を目前に控えた2月9日、冷遇してきた中国の習近平国家主席(63)が音を上げず、「動かざること山の如し」であることに焦り、取引の材料にしようとした「一つの中国」政策の見直しを、あっさり引っ込めてしまった。ロイター通信の分析記事は、「習国家主席から目に見える譲歩を何も引き出していないのに、態度を軟化させたことで、立場が弱まったようにもみえる」と評した。
毛沢東元国家主席の語録にある「米帝国主義は、張り子の虎である」という言葉を、青年時代に繰り返し学んだ習主席は、「トランプは張り子の虎であり、弱い。これで台湾、南シナ海や尖閣諸島に攻め込んでも大丈夫だ」と確信したことであろう。「侵掠(しんりゃく)すること火の如く」行動するかもしれない。
トランプ氏が弱みを見せたのは、中国に対してのみではない。元日に北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(33)が「新年の辞」で、「(米本土を狙う)大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験の準備が『最終段階』に入った」と述べたことに対し、1月2日、「そんなことは、させない!」とツイートした。「金正恩が越えてはならない一線」を設定したのである。
だが金委員長は、日米首脳がトランプ大統領のフロリダの別荘でいちゃいちゃと「ハネムーン」を楽しんでいるタイミングを狙い、2月12日に新型の中長距離戦略弾道ミサイル「北極星2型」を日本海に射ち込んだ。いつもの「米国に対する求愛行動」の一環であり、米本土を狙える型ではないものの、あっさりと「越えてはならない一線」をかすめてしまった。
この行為に対し、記者会見で安倍首相と並び立ったトランプ大統領は質問を受けず、「米国は常に100%、日本とともにある」と発言するのが精一杯。自ら設定した「越えてはならない一線」について追及されるのを怖れたからである。
当面のトランプ大統領の対応は、習主席を通しての金委員長の説得、自分が槍玉に挙げた国際連合を介した制裁措置など、「弱腰で中国頼み」という、オバマ政権時代と代り映えのしないものになろう。発言が勇ましい分、「張り子の虎」の印象が強まってしまうのである。
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