金正恩、指導者地位が安定
Japan In-depth / 2017年3月7日 18時0分
ここ20年、世情では北朝鮮経済は常に最悪といった形で語られてきた。80年代に韓国経済に大きく引き離され、90年代には飢饉や餓死者発生がニュースとなった。それが今でも北朝鮮経済の認識となっている。今でも「国民を飢餓線上に置きながら、核開発をしている」といった批判がそれだ。
だが、北朝鮮経済は改善している。
なによりも自由市場の登場と発達は大きい。例えば、2000年代末には既に自由市場や闇経済の発達がニュースとなっている。政府がそれを制限しようとして失敗したというものだ。これは当局としても無視できない規模に達していることを示すものだ。最近ではAP通信が「自由市場なしに経済は維持できない」(大意)といった内容の記事を配信している。
食糧生産も自由経済で向上する。同様に、デイリーNKは自留地耕作の発展を報道している。旧ソ連の例からしても、その生産性は間違いなく高い。集団農場とは異なり努力すれば報われるためだ。よほどの天候不順がない限り、最低限の食料は確保されるだろう。
つまり、かつてのような国民経済困窮やそれによる体制動揺はない。流通が確保され、食料もカロリーベースで逼迫しなければ治安問題とはならないからだ。
・安全保障環境の安定
安全保障環境も安定している。これも外交的努力の必要性を失わせる。体制を維持する上で、軍事面要求から対米関係改善の必要がなくなるからだ。
これは核と弾道弾を入手したことが全てだ。結果、北朝鮮は「核による抑止が実現した、先制攻撃を受けることはない」と考えている。実際に、北朝鮮の体制を揺るがす大規模武力行使は封じられた。北は、それをすれば共倒れ覚悟で核を撃つといった構えを見せているためだ。
米国による先制撃破も不可能となりつつある。北朝鮮は大陸間弾道弾や、通常動力だが弾道弾搭載潜水艦も実現間近である。前者により米本土攻撃が可能となり、後者により北朝鮮核ミサイルの一挙覆滅が困難になる。結果、米国は通常兵器による核ミサイルの先制撃破、90年代に検討されたサージカル・レイドを選択肢とはできなくなくなる。
ちなみに、弾道弾搭載潜水艦には抑止力としての実用性はない。北朝鮮の環境ではほぼ無意味なためだ。日本海は所在を隠すには狭い。しかも日米海軍は潜望鏡探知レーダを実用化しており、より大きなスノーケルを上げればすぐ探知されてしまう。さらに北朝鮮は超長波放送や衛星通信といった潜水艦通信の手段を欠いており、発射命令を即時連絡できない。さらに北朝鮮軍隊は中央統制型であり、長期監視できない潜水艦に鍵のついていない核ミサイルを渡し切りし難い。
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