「不寛容の本質」を考えよう
Japan In-depth / 2017年3月8日 11時0分
Japan In-depth 編集部(坪井映里香)
「不寛容」という言葉を最近様々な場面で聞く。社会学者の西田亮介氏はそういった現代社会の「不寛容」さに焦点を当て、統計やいくつかの事例を用いつつ実態やメカニズムを分析した『不寛容の本質』という本を上梓した。
『不寛容の本質』のサブタイトルは、「なぜ若者を理解できないのか、なぜ年長者を許せないのか」。西田氏はこれがむしろ「メインのタイトル」としたうえで、若者も年長者もお互いに不寛容である、と述べた。その理由として、まず純粋に年長者、お年寄りが増えたことを指摘。「昔は長く生きること自体が珍しくて、長く生きた人だから尊重するというのがあった。でも今はたくさんいる。なので、お年寄りのポジションというのも変わった。単に長く生きているだけだと、それだけによって敬うというのは難しくなっている時代。」と述べた。
西田氏によるとこの本は、「不寛容の本質は、日々刻々と変化している、だが、我々の認識や社会の制度の変化は速度が遅い。習慣や会社もそうだが、昭和的なもので動き続けている。その間にはとてもギャップがあるということをいろいろな対象を扱いながら見ていく」ものであると述べた。
他の本との相違は、昭和の見え方は「年長世代と若年世代で二つの見え方」があり、かつ「対照的」であることを指摘しているところだという。年長世代の見る昭和というのは、ある種の「ノスタルジー」で、昭和の面影。特に昔のことはデフォルメされ、美化される。「昔はよかった。」というように昭和を見ている。
一方で現役世代の見る昭和は、古いものだからさっさと乗り越えようとされるが、良かった点もある、という認識。西田氏は昭和の一つの習慣として、「マイホームを買う」という習慣を例に挙げた。しかしそれは、正社員で35年ローンを組むことができるという前提で、「右肩上がりの給与体系とセット」である。非正規雇用も多く、将来が見通せない今の現役世代にとって「昭和的な選択を取ることができないというところもあるという図式」であり、若者にとっての昭和は「羨望の昭和」であると西田氏は述べた。
つまり年長者と若者、両者には「そもそも認識ギャップがあるうえに、その見え方というのが全く対照的なものになっている。」ということだ。昭和30年生まれの安倍編集長は、「ノスタルジーは感じないが活気はあった。」とした上で、「今の社会に閉塞感があると若者に思わせているのだとしたら、それは何とかするのは政府、もしくは年配の人たちの役割じゃないかと思う。若い人たちが閉塞感を感じている、社会は不寛容と思っている社会なんて絶対に住みやすくないし、発展していかないような気がする。」と年長者の責任を指摘した。
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