日産ゴーンは去ったのか? その1
Japan In-depth / 2017年3月9日 11時0分
遠藤功治(株式会社SBI証券)
「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」
【まとめ】
・ゴーン氏は代表権ある会長に留まる
・日産の経営基本構造は変わらず
・中期経営計画は未達に終わる
●経営基本構造は不変
Ghosn is gone? Not quite, not yet.(ゴーンは去ったのか? いやいやまだいますよ)
2月23日、日産自動車はカルロス・ゴーン氏が社長職を辞し、西川共同CEOが社長につく人事を発表、ゴーン氏は引き続き代表権のある取締役会長を務めるとのこと。これを受けて、“何故社長交代の会見をしないのか”、“何故この時期に辞めるのか”、“何故会長職に留まるのか”、“何故日産の経営から退くのか”、、、とメディアは“何故”のオンパレード。これに対して筆者はつぶやく“何故世間はこんなに騒ぐのだろう?”経営の基本は何も変わらない、と思うからである。
日産は基本的にはフランス・ルノー傘下の自動車会社である。ルノーに買収された訳ではなく、吸収合併された訳でもない独立した会社ではあるが、フランスのルノー(筆頭株主はフランス政府)という会社とのアライアンスを機軸に、その資本構成から言っても、ゴーン氏到着からの経緯を見ても、フランス国民の税金とフランス人トップの強力なリーダーシップによって、倒産スレスレの状態から息を吹き返した会社である。そのトップはアライアンス取締役会の議長、よってChairmanと呼ばれ、ゴーン氏がこれにあたる。社長はこの取締役会が任命する。昔ながらの日本の会社にはあまり見られない経営の形である。
日本で言えば、社長が実質的にトップ、会長は社長の任を降りた半分リタイアしたようなポジションと捉えられがちだが、このルノー・日産アライアンスを含めた海外の事例では、全くその性格を異にする。取締役会議長なり会長なりChairmanがトップなのである。ゴーン氏が取締役会のトップなのだから、取締役会は自然と彼の息のかかったメンバー構成となる。
よって、実質的には今回ゴーン氏が西川氏を社長に指名し、また場合によっては、ゴーン会長は西川新社長をいつでもクビに出来るポジションにいる。そしてそのヒエラルキーが反対になることは無い。どこをどう見ても、今回の人事で日産の命令系統が変わることは100%ありえない。この点で、ゴーン氏が社長を離れたからといって、取締役会の議長職、それも代表権を持ったChairmanなのだから、日産の経営の基本的構造は何も変わらない。もしそうなら、社長交代の会見など必要ない。敢えて言うなら、Day-to-dayのハンコやサインをするような仕事は西川氏に移る、ということぐらいである。
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