北朝鮮、米空母に打つ手なし
Japan In-depth / 2017年4月25日 19時0分
文谷数重(軍事専門誌ライター)
【まとめ】
・北朝鮮の対艦攻撃能力は低く、米空母に手も足も出ない。
・最新鋭機持たぬ北朝鮮、空対艦ミサイルも無し。
・従って北朝鮮の反撃目標は韓国国内の米韓軍事基地となる。
■ 米空母カールビンソン日本海へ
ようやく米空母カールビンソンが日本海に入る。今月初旬には「即座にインド洋から北朝鮮周辺に展開する」と発表されたものの、遅れて今月末となった。
到着以降、北朝鮮に圧力を掛けることになる。北がどれほど痛痒に感じるのか、そもそも危険視するのかはともかく。少なくとも北や国際社会に米国の封じ込めの意思を示すものとなるだろう。
この米空母機動部隊に対し、北朝鮮は対抗できるのだろうか?
北は空母機動部隊には手も足もでない。対抗するとしても陸上での停戦ラインを越えた銃砲撃、あるいは弾道弾の発射試験や核実験に限定される。
なぜなら、北朝鮮の対艦攻撃能力は低いためだ。北朝鮮は航空機、艦艇、潜水艦といったいずれの攻撃手段でも米空母を傷つけることはできない。攻撃しても戦力を消耗させる結果に終わる。
■ 航空攻撃は通用しない
まず、北朝鮮による航空攻撃は行われない。これは戦力として通用しないだけではなく、それにより北朝鮮はなけなしの防空戦力を失うだけだからだ。
北朝鮮空軍は最新鋭機を保有していない。『ミリタリー・バランス 2016』によれば戦闘機等を545機保有しているが、ほぼ旧式機である。例外は18機+のMig-29だけ、足してもMig-23を56機程度だ。対地攻撃機のSu-25を34機のぞけば、残りは旧式のMig-21やそれ以前の機体である。
すべてを可動状態に持っていくのは難しいが、仮にこのMig-29と23を一挙投入しても米空母に有効打は与えられない。米空母側の迎撃戦闘機やイージス防空システムを突破できないからだ。もともと後者は5分間に200発の対艦ミサイル同時攻撃に耐えられるように整備されたシステムであり、その後も性能向上は続いている。
そもそも北が空対艦ミサイルを保有している話はない。まずは短射程の対地攻撃用ミサイルか爆弾で攻撃しなければならない。一応だが新型の艦対艦ミサイルができた話がある。目視照準ならこれは戦闘機に積んで発射できるが、イージス側の防空ミサイルの射程内に入る必要がある点で大差はない。
唯一の手段は新旧あわせて545機すべてを一挙に投入する手法だ。あまり期待はできないが、うまくすればイージスシステムを飽和させられるかもしれない。
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