トランプ減税案は絵に描いた餅
Japan In-depth / 2017年4月29日 0時9分
岩田太郎(在米ジャーナリスト)
「岩田太郎のアメリカどんつき通信」
【まとめ】
・過去最大の減税案だが財源示されず。
・大企業優遇で中間層に恩恵無しとの見方も。
・権力闘争もあり具体策は数か月先になりそう。
■「史上最大の減税」の中身
トランプ米政権は4月26日、「米史上最大の減税」と銘打った税制改革の骨子を発表した。目玉は、現在最高40%と主要国で最も高い法人税率を、主要国で最も低いレベルの15%まで大幅に引き下げる提言だ。中間層向けの減税も盛り込んでいる。こうした政策で企業投資や消費を活性化し、トランプ大統領が目標とする国内総生産(GDP)の年率3%から4%の成長を実現したい考えだ。
だが、そもそも減税に景気浮揚効果があるのか、またトランプ支持層の中核である白人中間層に恩恵をもたらすものなのか、懐疑論が根強い。また、減税には財源が必要だが、それが共和党主流派の忌み嫌う赤字国債の発行になるのか、別の歳入源があるのか、全く示されていない。さらに、中間層への減税についても年収に応じた減税率が具体的に示されていない。「現時点では評価ができない」と専門家は嘆く。
発表から一夜明けた米論壇では、「やり過ぎ。最高法人税率をせめて20%まで引き上げなければ、米議会を通過できない」「法人税に個人税率を適用できる『パススルー』納税の新制度は金持ちの税逃れ天国になる」など、批判が渦巻いている。
減税の最も重要な目的である米経済の成長について、著名なマクロ経済の専門家である独アリアンツのモハメド・エラリアン氏は、「減税の骨子だけで年率3%の成長は実現できない。早急に具体性を出さなければ、絵に描いた餅に終わる」と手厳しい。
■そもそも大幅減税は効果があるのか
発表された減税の骨子はたった250語の箇条書きに過ぎず、財源の手当てや具体性が欠けているため、就任後100日の打ち上げ花火的な意味しか持たない。それでも年収25000ドル未満の貧困世帯(一人世帯の場合は年収12500ドル未満)の所得税は支払わなくてもよいことが明記されており、特筆される。
これは国民皆保オバマケアから低所得者層向け補助金をカットするというトランプ大統領の方針の「埋め合わせ」的な意味合いが大きいと思われる。だが、削減される補助金の額のほうが大きくなるため、現実には貧困層の増税に近い。
また、中間層の税率を現行の7段階の累進課税から10%、25%、35%へと簡略化する方針が示された。ところが、どの現行税率がどの新税率に移し替えられるのかが示されておらず、ムニューシン財務長官も「必ず中間層の減税につながるとは保証しない」と明言。
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