朝鮮戦争特需、米国にも 金王朝解体新書 その4
Japan In-depth / 2017年6月1日 18時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
「林信吾の西方見聞録」
【まとめ】
・第二次大戦後、日本企業は朝鮮特需で息を吹き返した。
・実はアメリカの軍需産業も大いに潤った。
・戦争で経済が潤ってもそこに「真の豊かさ」はない。
わが国では、戦後の復興と経済成長について多少なりともする人であれば、朝鮮戦争による特需を見逃すことはない。
ただ、すでに60年以上も前の話で、とりわけ若い世代にとっては、アジア太平洋戦争と同様、歴史の彼方のような話と成ってしまっていることも、また事実のようだ。
敗戦で焦土と化した日本の製造業が、軍需によって息を吹き返したという事実、それを象徴するのがトヨタだと聞かされると、驚く人が多い。
トヨタ自動車工業(当時の社名)は、1950年6月に入った時点では、1億3000万円近い赤字を抱え、倒産寸前の状態だった。ちなみにこの年、大卒銀行員の初任給は3000円ほどである。給与の未払いや人員整理が繰り返された結果、4月以降はストライキが頻発し、工場はまともに稼働していなかった。
そこへ、6月25日の朝鮮戦争勃発である。米軍用のトラックを大量に受注した同社は、驚くなかれ、7月中には赤字を解消してしまった。そればかりか、翌年1月から3月までの四半期決算においては、2億4930万円の純利益を計上した。戦後初めて株主への配当も行われている。
これはほんの一例で、金属加工業(有刺鉄線など)や繊維産業(毛布、テント、麻袋など)に大口の発注が相次いだ。ある年代以上の読者は「金へん景気、糸へん景気」という言葉を、耳にしたことがおありだろう。こうして流れ込んだ資金は設備投資に還元され、昭和30年代(朝鮮戦争勃発は、元号でいうと昭和25年)の高度経済成長を下支えすることとなったのである。
一方、こちらは日本ではあまり知られていない事実だが、米国の軍需産業もまた、朝鮮戦争によって大いなる恩恵を被った。
第二次世界大戦終結後、米国は大規模な軍縮に乗り出し、反共の旗印を掲げていながら、再びアジアで戦うことはよしとせず、中国大陸の共産化を阻止することができなかった。戦勝国においても、戦争はもう嫌だ、という声は広範囲かつ根強かったのである。
ところが、朝鮮戦争の緒戦において、まずはソ連製戦車の威力を思い知らされた。米軍が保有していた戦車に比して、機動力・防御力・手法の威力すべてにおいて、ソ連のT-34が勝っていた。あとは読者ご賢察の通り、米軍は新型戦車や対戦車兵器を開発し、大量生産に乗り出す。
この記事に関連するニュース
-
「米軍がソ連機を飛ばしていた」だと…? 冷戦下の「極秘ミッション」なぜ行われたのか
乗りものニュース / 2024年4月21日 19時12分
-
“二刀流”どころか“三刀流”、いやそれ以上か!? 現用戦闘機もはや「なんでも屋」いつからそうなった?
乗りものニュース / 2024年4月20日 18時12分
-
プーチン氏が“やられると困る”作戦とは? 「第三国でも攻撃するぞ」発言の真意 ウクライナのF-16登場を前に
乗りものニュース / 2024年4月18日 6時12分
-
北朝鮮が舞い上がる「ウクライナ戦争特需」の注文主はロシア
ニューズウィーク日本版 / 2024年4月9日 15時0分
-
1960年代のベトナム戦争を契機に、〈沖縄の日本復帰〉が実現した“複雑な事情”とは【歴史】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月2日 11時15分
ランキング
-
1真榊奉納を「断固非難」=ロシア
時事通信 / 2024年4月25日 21時22分
-
2新防衛戦略の策定提案へ=「欧州、属国集団にあらず」―仏大統領
時事通信 / 2024年4月25日 22時43分
-
3豪雨被害で死者200人超 アフリカ東部タンザニアなど
共同通信 / 2024年4月26日 9時15分
-
4米国、ニジェールから軍撤退を表明(ニジェール、米国、ロシア、中国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年4月26日 1時50分
-
5エレベーターが20階から落下、1人死亡=当局「品質には問題なし」―中国
Record China / 2024年4月25日 23時0分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください