朝鮮戦争特需、米国にも 金王朝解体新書 その4
Japan In-depth / 2017年6月1日 18時0分
ここでもうひとつ、ソ連の独裁者スターリンが犯した誤算について述べねばならない。戦争勃発直後の6月27日、国連安全保障理事会が招集され、北朝鮮を侵略者と断じ、武力制裁が決議された。
この国連安保理だが、ソ連は出席していない。国連における「中国代表」の座が、未だに台湾国民政府のものであることを不服として、ボイコットしたのである。出席してさえいれば、当時のソ連は常任理事国で拒否権を持っていたわけだから、少なくとも国連軍による武力制裁という「錦の御旗」を与えることはなかったはずだ。
もっとも、この時の教訓から、米ソは安全保障理事会において、自国の国益に反すると見なした決議案には拒否権を発動したり、非協力的な態度に徹するようになり、この状況はソ連が崩壊してロシアとなっても変わることはない。国連が、侵略行為に対する抑止力の機能を自ら葬ったとも言える。
国連の問題はさておき、米国の軍需産業が朝鮮戦争で大いなる利益を得た、という話を、もう少し続けよう。
米軍を中心とする国連軍の反攻は、1950年9月15日、インチョン(仁川)上陸作戦によって始まった。この時点で、すでに補給などが限界に達していた北朝鮮軍は、たちまち敗走。28日までにはソウルの奪還に成功する。10月1日には、韓国軍が独力で38度線を突破した。
ところがその後、戦局は再び大きく動く。中国が、「国連軍が38度線を越えたなら、参戦する」と警告を発したのだ(10月2日)。しかし国連軍側は取り合わず、20日にはついにピョンヤンを占領した。
かくして中国は、義勇軍の派兵を決定。義勇軍と言っても少人数の助っ人ではなく、後方支援まで含めると100万人を超す規模で、空軍まで持っていた。しかも、後日明らかになったところでは、中ソ国境付近の基地にいたソ連人パイロットも参戦したのである。
北朝鮮軍は、未だ最新式の空軍を持つに至っていなかったが、いちはやくソ連の支援を受けた中国や、ソ連人パイロットが操るのは、当時最新鋭のジェット戦闘機ミグ15。実は「人海作戦」に頼る義勇軍より、このミグ15の方が、国連軍にとっては脅威であったのだ。
それまで、制空権は完全に国連軍のものであり、戦争を体験した世代の日本人にとっては忘れられない(もしくは、思い出したくもない)名前であろうB29戦略爆撃機による「北爆」も始まった。ところが、スーパー・フライング・フォートレス(超・空飛ぶ要塞)の名に恥じぬ防御力を誇るこの爆撃機も、ミグ15の37㎜機関砲の前には顔色なしであった。大戦初期に連合軍のパイロットを震撼させた零戦(海軍零式艦上戦闘機)の主武装である20㎜機銃より、はるかに大威力なのだ。
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