インドは原発を買わない 日印原子力協定
Japan In-depth / 2017年6月9日 11時0分
文谷数重(軍事専門誌ライター)
【まとめ】
・インドに原子力技術輸出を認める日印原子力協定が国会で可決、承認された。
・インドの核開発黙認、原発輸出企業が無いことなどが批判の的に。
・インドは無尽蔵な石炭と水力により原発の必要がない。
6月7日、日印原子力協定が国会で承認された。それにより協定は批准が決定し、以降、事務手続等のあと8月にも発効すると見られている。
この協定は種々の批判に晒されている。日本からの原発輸出を進めるためにインドの核開発を黙認する中身であること。実際には輸出企業もないことがそれだ。後者については日本からの輸出元と目された東芝はすでに左前である。その別働隊として米国ルートによる輸出を担うはずだった米子会社ウエスティング・ハウスもすでに破綻している。
だが、そもそもインドは本当に原発を買うつもりなのだろうか?
インドは原発を求めてもいないからだ。非常用のエネルギー源としては石炭と水力がある。C02抑制でも価格暴落した天然ガスが有利となる。なによりも将来的な電力開発では再生可能エネルギーを優先している。そこに原発が入り込む余地はない。
■無尽蔵の石炭・水力
インドは原発を求めない。
その理由の第一は非常用の価値を持たないことだ。インドは石炭資源と水力余裕があるため、エネルギー安全保障として無理に原発を増設する必要はないのである。
インドには300年分の埋蔵石炭がある。インドの石炭資源は既知分だけで1250億トン、推定量では3000億トンに達する。対して消費は年8億トン程度にすぎない。最大に見積もれば原料炭を含めて300年分の燃料があることになる。それでいながら石炭を輸入しているのは社会主義時代の探鉱経営がデタラメだった影響にすぎない。
また、発電用に限れば水力も期待できる。ほぼ保護領状態のブータン、経済的には衛星国のネパールを含めて、ヒマラヤには水力資源開発の余裕も大きいためだ。
実際の発電構成をみても主席は石炭が59%、次席も15%の水力である。これは石油・天然ガスのエネルギー輸入とは関係なく運転できる。つまりはエネルギー価格が暴騰や戦争によって輸入が途絶えるといった非常時でも発電には困らないのである。
■天然ガス価格の下落
理由の第二は、原発はCO2排出抑制でも最適ではないことだ。それなら天然ガス利用を進めたほうがよい。
価格下落した結果、低コストであり導入も迅速簡便である。
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