海自ヘリ選定巡る下克上と内局 その1
Japan In-depth / 2017年6月25日 8時0分
実際にUH-X選定に先だって平成23年度に開催された海上自衛隊会議において、候補機は大型で、できれば既存機との共用を考慮するという方向性が確認されていた。この会議は海上自衛隊の直轄部隊の長が集まる最高意思決定機関である。であれば、初めから現在使用されている輸送・掃海ヘリMCH-101の一択しかなかった。
だがその後の機種選定の過程では、MCH-101、SH-60K、エアバスヘリのNH90の三機種が候補とされた。この段階で海幕装備部の検討チームは強引に、三菱重工が製造している対潜哨戒ヘリ、SH-60Kをベースにした新型機に有利な条件を入れようとした。それに対して武居海幕長は、海上自衛隊会議の決定を尊重せよと異議を唱えたのだ。
候補として上がった3機種を見てみよう。
まず本命だったMCH-101は海自が輸送・掃海用として川崎重工がライセンス生産(実態は単なる組み立て生産)採用した大型ヘリだ。これはレオナルド(旧アグスタ・ウエストランド)のAW101をベースにした機体であり、全備重量は15.6トンである。掃海装備はロールオン・ロールオフで、容易に取り外しができて、輸送ヘリとして利用できる。掃海機材を下ろせば汎用輸送ヘリとして使用できる。因みにその内2~3機が海自の特殊部隊特警隊の運用に併せた仕様となっている。
▼カナダ軍で救難ヘリとして採用されたAW101
提供)レオナルド
キャビンは全長6.5メートル、全幅2.49メートル、全高1.9メートルでキャビン容積は27.5立法メートル、キャビンに武装兵士24名を収容できる。懸吊重量は最大5.44トンである。機体後部にはランプドアがあり、車輛など大型の貨物も搭載できる。
次いで三菱重工が米シコルスキーのヘリに改良を加えた海自の哨戒ヘリ、SH-60Kをベースにした汎用型だ。SH-60Kはシコルスキーのオリジナルをベースに三菱重工が開発した機体であり、全備重量は10.65トンで、原型のUH-60よりもキャビンの全長が33cm、全高が15cm拡張されている。60Kの汎用型はペーパープランで情報がないので、比較のためにUH-60Lのスペックを紹介すると、キャビンは全長3.84メートル、全幅1.88メートル、全高1.37メートルでキャビン容積が11.6立方メートル。つまり60Kのキャビンサイズは全長4.17✕全幅1.88✕全高1.5メートル。ペイロード1.2トン、武装兵士11名が搭乗でき、最大懸吊重量が3.6トンとなっている。ランプドアを有していないで大型貨物は搭載できない。
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