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海自ヘリ選定巡る下克上と内局 その2

Japan In-depth / 2017年6月25日 8時0分

話を戻すと、海自のUH-X 候補の中で最も有力なのは大型で、既に海自が運用しているMCH-101だ。次いで能力だけならばランプドアを有し、ペイロードも相応にあるNH90である。ただし、海自は運用していない機体である。しかも先述のように早々にメーカーが辞退している。そしてもっとも不利なのが60Kだった。

商戦は事実上MCH-101とSH-60Kの改良型の一騎打ちとなった。ところが仕様決定する段階で、SH-60Kに有利なように仕様が歪められてきたのだ。まず当初救難に関しては電子戦機EP-3の乗員15名全員を救助できることが要求されたが、これが60Kに有利なように12名に減らされている。だが下駄を履かせても60Kは実際の救難に役に立たない。

レスキューミッションでは担架や救命用のシステム、更に救難やメディック要員が搭乗する必要がある。当然ながら墜落機のクルーは怪我をしたり、冷たい海水に使って低温症などになったりしている。元気な人間を詰め込んで運ぶのとはわけが違う。その場合、60Kであれば救難できる人数は1~2名に過ぎない。

だが検討チームは、とりあえず遭難者はヘリに引き上げ、手当は艦に戻って行えば、12名を収容できるのでよいと主張した。だがそれは救急救命の現実と原則を無視した空論に過ぎない。現場で迅速に手当をしなければ、救えない命が多いのは言わずもがな、であろう。これは、遭難者は死ね、と言っているに等しい。「これでは救難ヘリではなく、死体運搬ヘリだ」と内局の高官は酷評する。それとも海上自衛官は手当をすれば死んでから生き返る生き物なのだろうか。

救難ヘリは荒れた海でも活動する必要がある。だがUH-Xの選定では救難時の海の荒れ具合を示すシー・ステートも6から2に下げられた。これまたシー・ステートが低い60Kに有利にするためだろう。

本来のこの新型ヘリは、ハンガーに余裕があり、全通甲板を持つDDH(ヘリ搭載護衛艦、事実上のヘリ空母)輸送艦から護衛艦などの艦艇に物資を輸送するのだから大型ヘリである方が有利だ。逆に大型ヘリなどの運用を見越したからこそDDHは「ヘリ空母」になったわけだ。そうでなければ以前の「しらね」級のように3機程度を収容できる通常の駆逐艦型のフネでもよく、より建造コストも抑えられたはずだ。

また当初はMCH-101のローター・ブレードが輸送できることも挙げられていた。これもランプドアを持たず、キャビンが狭い60Kには不可能だ。このためかこの要求は取り下げされていた。つまり輸送と救難のどちらの任務でもSH-60Kの派生型に利するように意図的に「改悪」されていたのだ。

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